岩渕明

岩渕 明（いわぶち あきら）氏は、1949年9月18日に宮城県石巻市で生まれ、日本の機械工学分野において顕著な功績を残した研究者、教育者、そして大学運営者です。その経歴は、故郷に近い東北地方を中心に展開されました。

高校は地元の宮城県石巻高等学校で学び、その後、東北大学工学部機械工学科に進学し、1972年に学部を卒業しました。さらに同大学の大学院工学研究科機械工学専攻で学びを深め、1974年には修士課程を修了しています。大学院修了後、直ちに東北大学工学部機械工学科の助手として研究教育の道に入り、また同時期には東北大学陸上競技部の監督も兼任するなど、教育と人材育成にも早くから関わっていました。

研究者としての研鑽を積むため、1983年には東北大学から工学博士の学位を取得。同年に文部省の在外研究員として英国のノッティンガム大学金属工学科に滞在し、国際的な視野を広げ、研究活動を行いました。海外での経験を終え、1984年に岩手大学工学部機械工学科の助手に着任します。

岩手大学では着実にキャリアを積み重ね、1986年に講師、1987年には助教授、そして1991年には教授へと昇進しました。この間、機械工学、特に材料のトライボロジー（摩擦・摩耗・潤滑）分野を中心に精力的な研究活動を展開し、数多くの成果を発表しました。また、大学における研究推進体制にも深く関与し、1995年には岩手大学地域共同研究センター長、2003年には岩手大学工学部附属金型技術研究センター長を務め、産学連携や地域産業への貢献にも力を入れました。

学外においてもその専門性と識見は高く評価され、2003年には日本機械学会機素潤滑設計部門長、そして2009年には日本機械学会副会長という、日本の機械工学分野を牽引する学会の要職に就任しました。これらの役職を通じて、学会の発展や研究交流の促進に貢献しました。2005年には、長年にわたる学会への功績が認められ、日本機械学会110周年功績賞を受賞しています。

研究・教育に加え、大学全体の運営にも深く関わるようになります。2010年には岩手大学の理事（地域連携・国際連携担当）および副学長に就任し、大学の対外的な活動や国際化を推進しました。翌2011年には総務分野も担当する理事・副学長として、大学運営の要としてその手腕を発揮しました。2012年には文部科学省科学技術・学術審議会産業連携地域支援部会委員や日本学術会議連携会員を務めるなど、国の科学技術政策や学術振興にも貢献しました。

特に東日本大震災からの復興という重大な課題に対し、2013年には復興庁復興推進委員会委員として、被災地の未来を築くための国の取り組みに参画しました。そして、2015年から2020年までの5年間にわたり、岩手大学の学長として大学の最高責任者を務めました。学長としては、地域に根差した大学としての使命を果たすとともに、グローバルな視点での教育・研究体制の強化、震災からの復興支援、そして大学改革を推進しました。

長年にわたる教育、研究、学会活動、そして大学運営・社会貢献における多大な功績に対し、2025年4月には瑞宝中綬章を受章することが決定しています。岩渕氏の貢献は、機械工学分野の発展だけでなく、高等教育機関の運営、地域社会との連携、そして国の重要な政策形成に至るまで、極めて多岐にわたるものです。

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