岩田年浩

岩田年浩（いわた としひろ）氏は、1946年1月14日、京都市に生まれた日本の著名なマクロ経済学者です。本名は山名年浩（やまな としひろ）。特に経済教育学の分野で先駆的な役割を果たし、日本で初めてこの分野の博士号を授与された人物として知られています。経済教育学会の創設メンバーの一人であり、同学会の会長も務めました。

経歴と学術活動

岩田氏は、大阪教育大学大学院、神戸商科大学（現兵庫県立大学）大学院で経済学を学び、1980年に経済学博士号を取得しました。教育者としてのキャリアは、大阪経済法科大学講師、大阪教育大学助教授を経て、関西大学総合情報学部教授として長く教鞭をとりました。その後、大阪経済法科大学客員教授、京都経済短期大学学長を歴任。2023年からは大阪観光ビジネス日本語学院の校長を務めています。

専門は経済成長論と経済学教育論。経済学研究においては、資本主義市場経済の調整機能に限界があるというケインズ学派の視点を持ちつつ、投資関数の存在が経済の不安定性を引き起こす原因であることを証明するなど、マルクス学派や置塩信雄氏の視角とも接点を持つ独自のアプローチを展開しました。株価変動の実証分析や経済データの「音化」といった先駆的な実験手法も用い、マクロ経済理論の実証・実験分野に貢献しています。新古典派とは一線を画す、現実の経済動向に根ざした研究を特徴としています。

経済教育への貢献

岩田氏の最大の功績の一つは、日本の経済教育学という未開拓分野を確立したことです。その集大成である博士論文を書籍化した『経済学教育論の研究』は、学会で高く評価されました。この研究は、日本の経済学教育の歴史、諸外国の実態、そして「何を、どのように、どこまで教えるべきか」という課題と方法論を体系的に論じた、経済と教育の学際的研究成果です。

教育者としても卓越した手腕を持ち、学生や生徒の学習意欲や発達段階に応じた授業設計に定評がありました。経済理論の実証的成果と理論を結びつけ、学生が誤解しやすい点を丁寧に説明し、対立する視点を提示して思考を促すなど、様々な工夫を凝らしました。大講義を得意とし、立ち姿勢での話術、明瞭な発声、最新機器の活用、学生の反応を省みた授業改善など、実践的な教育手法を駆使しました。

大学経営と社会活動

京都経済短期大学の学長時代には、少子化による定員割れが進む短期大学界にあって、就任後3年間で定員を大幅に超える学生確保に成功し、文部科学省から定員増を認められるという顕著な実績を残しました。学長自らが学生の進路支援や高校へのアピールに奔走するなど、精力的に大学改革に取り組みました。複数の教員による討論形式の授業企画など、教育内容の活性化にも尽力しました。

学術・教育活動に加え、企業や学校法人、財団法人、社会福祉法人などの顧問を務めるなど、多方面で社会に貢献しています。全国各地での講演活動は650回を超え（2024年3月現在、市民講座等を除く）、長年にわたり人々に経済知識をわかりやすく伝えてきました。

歴史研究とその他の活動

晩年には歴史研究にも取り組み、自身のルーツである山名氏の歴史を深く探求しました。また、長年の研究成果として、日本史の経済的変遷と歴史上の人物の名言との関連性をまとめた大著『日本史の変動と名言摘録』を、本名の山名年浩名義で出版しています。

経済教育学会からは、平成17年に経済教育学会教育実践賞、令和4年に経済教育学会功労賞を受賞しています。その幅広い活動は多くのメディアでも紹介され、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などに出演・掲載された実績も多数に上ります。幼少期から作文や詩で新聞に掲載されるなど、文章表現にも長けていました。

岩田年浩氏は、経済学の研究者として、経済教育の実践者として、そして大学経営者として、常に現実社会を見据え、理論と実践を結びつける独自の視点と情熱を持って活動を続けてきました。その功績は、日本の経済学、特に経済教育学の発展に多大な影響を与えています。

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