島崎英彦

島崎英彦：日本の鉱床学を牽引した研究者

島崎英彦氏は、1939年東京生まれの地球科学者であり、東京大学名誉教授です。専門は鉱床学で、数々の功績を残した第一人者として知られています。弟は地震学者の島崎邦彦氏です。

少年時代から鉱物標本の収集に親しみ、その興味は将来の進路へと繋がりました。東京都立日比谷高等学校卒業後、東京大学理学部地学科に進学。大学院では渡辺武男氏の指導の下、鉱床学を専攻しました。1968年には理学博士号を取得、東京大学総合研究資料館助手としてキャリアをスタートさせます。

その後、カナダのマギル大学やサスカチェワン州立研究所での研究員を経て、1971年に帰国。東京大学総合研究資料館に復職後、理学部地質学教室へと移り、助手を経て講師、助教授、そして1987年には教授に昇進しました。教授時代は地質学教室第三講座（鉱床学）を担当し、日本の鉱床学研究の中核を担いました。

島崎氏の研究は、主に日本のスカルン鉱床の成因解明に焦点を当てています。特に、スカルン鉱床と関連する火成岩との関係性を明らかにすることに大きく貢献しました。スカルン鉱床は、変成作用によって形成される特殊な鉱床で、多様な金属資源を含むことから、資源探査において重要な意味を持ちます。島崎氏の研究は、この分野における理解を深める上で大きな役割を果たしました。

鉱物学への貢献も多大です。都茂鉱や定永閃石など、数種類の新鉱物の発見にも携わり、その功績は広く認められています。さらに、岡山県で発見された新鉱物は「島崎石」と命名される栄誉に輝きました。これらの業績に対し、日本鉱物学会櫻井賞、資源地質学会加藤武夫賞、日本鉱物科学会渡邉萬次郎賞など、数々の賞を受賞しています。

1999年に東京大学を定年退職後も、その活躍は止まりません。国際協力事業団の派遣で中国科学院地質・地球物理研究所に赴任し、2003年まで金属資源の探査・開発に関する共同研究を行いました。帰国後も、東邦大学非常勤講師、国立科学博物館地学部客員研究員、東京大学総合研究博物館研究事業協力員など、精力的に研究活動に従事しました。

研究活動に加え、啓蒙活動にも積極的に取り組んでいます。自身の研究経験や日常生活の雑感を綴った随想集「石の上にも五十年」シリーズ（全3巻）や、鉱石の成り立ちを分かりやすく解説した入門書「鉱石の生い立ち」を出版。専門的な知識を一般の人にも理解しやすい形で伝え、多くの人々に鉱物や地球科学の魅力を伝えています。

島崎英彦氏の研究と教育活動は、日本の地球科学、特に鉱床学の発展に多大な貢献を果たしました。その業績は、後世の研究者たちに大きな影響を与え続けるでしょう。彼の功績は、単なる研究成果にとどまらず、科学の普及と国際協力への貢献にも及ぶ、まさに日本の鉱床学界の巨人と言えるでしょう。

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