崇文総目

北宋王朝が誇る書目:『崇文総目』のすべて



『崇文総目』は、北宋の宮廷が編纂した、中国古典籍の膨大な目録です。宋の宮廷図書館、崇文院の蔵書を記録したもので、その歴史的価値は非常に高く評価されています。かつては66巻にも及ぶ大部の書物で、各書物には詳細な解説(解題)が添えられていたと伝えられています。

成立の経緯と編纂



崇文院は、宋の歴代皇帝が収集した書籍を収蔵する重要な施設でした。しかし、大中祥符8年(1015年)の大火により、多くの貴重な書籍が失われるという痛ましい出来事に見舞われます。この惨事を教訓に、景祐元年(1034年)、仁宗皇帝は王堯臣、王洙、そしてかの有名な欧陽脩ら、当時を代表する知識人たちに書物の整理と目録作成を命じました。

彼らは代の書目『群書四部録』(現存せず)を参考に、綿密な作業を行い、慶暦元年(1041年)に『崇文総目』を完成させました。この書目は、中国古典籍研究において極めて重要な文献となり、後の世代に多大な影響を与えました。

略本と輯逸:失われた書物の復元



時の経過とともに、原本の『崇文総目』は失われ、現存するのは、叙述や解題を省略した簡略版(略本)のみとなっています。この略本は、書名、著者、巻数といった基本的な情報のみを記したもので、原本の情報量は大きく減少しています。

しかし、幸いなことに、欧陽脩が執筆した各分類の序文(叙釈)は『欧陽文忠公集』に収められており、原本の一部を垣間見ることができます。『文献通考』などの文献からも『崇文総目』からの引用が見つかり、研究者たちはこれらの断片を繋ぎ合わせ、原本の姿を復元しようと努めてきました。

四庫全書』編纂の際にも、既存の略本と様々な文献からの引用を元に12巻本が作成されました。さらに、嘉慶4年(1799年)、銭侗らによる『崇文総目輯釈』5巻が刊行され、失われた叙釈の復元と注釈が試みられました。1936年には陳漢章による『崇文総目輯釈補正』が出版されるなど、現代に至るまで研究は継続されています。

批判と評価:時代を超えた議論



『崇文総目』は、その歴史的価値は高く評価されていますが、同時に批判の対象にもなりました。有名な歴史家・鄭樵は『通志』の中で、『崇文総目』に書物ごとの解題をつける必要性を疑問視し、分類自体で書籍の内容は明らかであると主張しました。

一方、『四庫全書総目提要』は鄭樵の批判に反論し、『崇文総目』を擁護しています。特に、道書や雑史の分類については、『通志』においても『崇文総目』の高い評価が確認できます。このように、『崇文総目』をめぐっては、時代を超えて様々な議論が交わされてきました。

まとめ



『崇文総目』は、北宋時代の文化遺産として、中国古典籍研究に欠かせない貴重な資料です。その成立過程、略本化、そして現代における研究の歩みは、中国の歴史と文化、そして書誌学の発展を理解する上で重要な視点を提供してくれます。 失われた原本の完全な復元は困難ではありますが、残された断片を繋ぎ合わせ、その全貌を明らかにしようとする研究者たちの努力は、これからも続いていくでしょう。

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