川上拓斗

川上 拓斗（かわかみ たくと）

プロ野球において、公平なゲーム進行を支える審判員の一人、川上拓斗は、1996年4月15日に新潟県小千谷市で生を受けました。現在、彼は日本野球機構（NPB）の審判員として、袖番号29を背にグラウンドに立っています。

球児から審判を目指すまで

川上氏の野球との出会いは、小学3年生の時でした。幼い頃から白球を追いかけ、中学時代にはチームのエースとして活躍しました。地元、中越高等学校に進学後も野球を続けますが、2年生の夏に怪我を負うなど、順風満帆ではありませんでした。3年生の夏には、一塁手としてベンチ入りメンバーに名を連ねたものの、主戦として出場する機会は限られていました。最後の大会となった県大会準々決勝、強豪・日本文理高校との試合では、最終回の土壇場で代打として打席に立ちましたが、結果は三振。この打席をもって、高校野球生活に区切りをつけました。

野球選手としての道を終えた彼が、次に目指したのはグラウンドに立ち続ける「審判員」という道でした。このきっかけは、高校時代の怪我にあります。試合に出られない期間中、チームの練習試合で審判を務める機会があり、そこで野球を支える審判の役割に魅力を感じたと言います。この経験が、彼のその後のキャリアを決定づける重要な転機となりました。

独立リーグでの研鑽

高校卒業後の2015年春、川上氏はプロ野球独立リーグであるベースボール・チャレンジ・リーグ（BCリーグ）の審判員としての一歩を踏み出しました。2017年までの3年間、独立リーガーたちの熱戦をジャッジする経験を積みました。当時の彼は、他の仕事と両立しながら審判活動を行っていたため、主に週末の試合を担当していました。限られた時間の中でも真摯に審判術を磨き続け、その努力が認められたのは2017年。この年、彼はリーグの最優秀審判員に選ばれる栄誉に輝きました。独立リーグでの経験は、彼の審判としての基礎を築く貴重な時間となりました。

NPBへの挑戦と昇格

プロ最高峰であるNPBの審判員を目指すため、川上氏は2013年に制度が始まったNPBアンパイア・スクールに挑みます。2015年から連続して受講しますが、最初の2回は残念ながら合格に至りませんでした。しかし、諦めることなく挑戦を続け、2017年の第5回スクールでついに合格を勝ち取ります。翌2018年からは、NPB研修審判員としてNPBの一員となりました。研修期間中は、前年まで自身が活動していたBCリーグへ派遣され、さらなる実戦経験を積むことになります。

そして、2019年1月1日、川上氏は日本野球機構審判部に育成審判員として正式に入局しました。育成審判員としては、主に二軍公式戦で経験を積むことになります。3年間にわたり、若手選手たちの成長を間近で見守りながら、審判としてのスキルと判断力を磨き上げました。この二軍での豊富な経験が、彼を次のステップへと押し上げます。

2022年1月1日、川上拓斗氏はNPBの一軍公式戦も担当可能な「正審判員」として契約を更改しました。これは、NPBアンパイア・スクールの制度が始まって以降、BCリーグ出身者としては初めてNPBの正審判員となった快挙です。また、彼が新潟県出身のNPB審判員となるのは、2010年に現役を退いた山﨑夏生氏以来であり、地元の野球ファンにとっても待望の存在と言えるでしょう。

今後の展望

2022年現在、川上氏はまだ一軍公式戦での出場記録はありませんが、正審判員となったことで、今後一軍の舞台で彼の姿を目にする機会が増えることでしょう。BCリーグでの最優秀審判員としての実績、そしてNPBアンパイア・スクールでの粘り強い挑戦を経て掴んだ正審判員の座は、彼の情熱と努力の証です。公平かつ的確なジャッジで、プロ野球の魅力を一層引き立てる彼の活躍に期待が寄せられています。

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