川副武胤

川副武胤（かわぞえ たけたね）

生涯

川副武胤は、1922年4月15日に、歴史学者である川副博の息子として東京に生まれました。彼は、第三高等学校を経て、1951年に東京大学文学部国史学科を卒業しました。その後、大学院に進み、研究を深めました。

1954年、川副は鎌倉市史の編纂員として実務に携わり、1960年には正倉院事務所の技官として文化財の保護にも貢献しました。1967年からは山形大学人文学部で教鞭を執り、講師、助教授を経て、1974年に教授に就任しました。1985年に山形大学を定年退官し、名誉教授となりました。その後、就実女子大学の教授、そして就実学園の理事として教育に尽力しました。

川副は、1969年に「古事記の研究」で名古屋大学から文学博士号を授与されました。これは彼の研究における重要な転換点となりました。

研究内容

川副武胤の研究は、日本古代史、特に『古事記』や『日本書紀』といった古典文献の解釈に焦点を当てていました。彼の研究は、文献の精密な分析に基づき、古代日本の神話や思想、文化を深く掘り下げています。特に、『古事記』に関する研究は、その後の研究に大きな影響を与えました。彼は、神話が単なる物語ではなく、古代社会の構造や人々の意識を反映したものであるという視点から研究を進めました。

また、川副は、古代の思想や文化が、後の時代にどのように影響を与えたのかについても深く考察しました。彼の研究は、日本の歴史を理解する上で不可欠な視点を提供しています。

著作

川副武胤は、生涯にわたり数多くの著作を発表しました。

主な著書には以下のようなものがあります。

『鎌倉の廃寺 禅宗の部』 （1960年）
『古事記』 （1966年）
『古事記の研究』 （1967年）
『日本神話』 （1971年）
『古事記及び日本書紀の研究』 （1976年）
『古事記の世界』 （1978年）
『日本神話の発見 古代史を作った神々』 （1979年）
『日本古代王朝の思想と文化』 （1980年）
『日本古典の研究』 （1983年）
『古事記考証』 （1993年）

これらの著書は、彼の研究成果を広く社会に伝えるとともに、多くの研究者に影響を与えました。

また、共著や翻訳、校注も多数手がけています。

『大和古寺巡礼』 （1962年）
『鎌倉 その風土と歴史探訪』 （1975年）
『鎌倉廃寺事典』 （1980年）
『日本書紀』 （1987年）
『神道大系 神社編 28　出羽国』 （1990年）

特に、『日本書紀』の現代語訳は、一般読者にも古典に親しむ機会を提供しました。彼の訳は、原典のニュアンスを忠実に伝えつつ、現代の読者にも理解しやすいように工夫されています。

晩年

川副武胤は、1993年6月29日に生涯を閉じました。彼の死後も、その研究は高く評価され、多くの人々に読み続けられています。彼の業績は、日本の古代史研究において、重要な位置を占めています。

参考文献

「川副武胤先生の還暦を記念して」山極潔「山形大学史学論集」1983-02-25
* 読売新聞訃報

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