川勝久

川勝 久（かわかつ ひさし）

1931年1月18日生まれ。日本の社会心理学者、ビジネス分野の翻訳家、そして多才な文筆家として知られる人物です。愛知県名古屋市で育ち、後に東京放送（TBS）で長年にわたりキャリアを積み、その後は大学教育の場で教鞭を執りました。

経歴とキャリア

一橋大学社会学部社会学科を1953年に卒業後、東京放送（現在のTBSホールディングスなど）に入社します。同社では、CM部長、営業促進部長、調査部長といった要職を歴任し、メディアと広告、ビジネスの最前線で活躍しました。この企業勤務の時期から、川勝氏は海外で出版されたビジネス書の翻訳や、自身によるビジネス関連の執筆活動を開始しており、現場での経験を学術的・実践的な知識として深化させていきました。一橋大学大学院修士課程も修了しています。1985年に東京放送を退職後、教育の世界へ転じ、産業能率短期大学で講師、助教授、教授を務め、後には淑徳大学国際コミュニケーション学部の教授としても活躍しました。

教育活動と並行して、NPO法人知的生産の技術研究会で講師を務め、情報活用や知的生産に関する知識普及にも尽力しました。また、国際的な活動としては、1980年から2002年まで、ハワイで開催されるホノルルマラソン協会のスペシャル・アドバイザーを務め、文化・スポーツを通じた国際交流にも貢献しました。

文筆家・翻訳家としての活動

川勝氏の活動の中でも特に特筆されるのは、その広範かつ実践的な文筆・翻訳活動です。広告、コミュニケーション、情報整理、心理学、時間管理、ライフスタイル、マーケティング、交渉術といった多岐にわたるテーマで、数多くの著作を世に送り出しました。初期の著作には広告やマスコミに関するものが多く見られ、『広告の心理』(1961年)、『CMの世界』(1964年)、『マスコミ広告入門』(1966年)などがあります。これらの著作は、メディアの影響力やコミュニケーションの技術を心理学的な視点から分析したものでした。

また、現代社会においてますます重要となる情報管理や知的生産の技術に関する著書も多数執筆しています。『情報整理学 集める・捨てる・活かす技術』(1970年)は、情報の洪水に対応するための実践的な方法論を提示し、多くの読者に支持されました。時間の効率的な使い方や自己管理に焦点を当てた『自分の時間を創りだす法』(1976年)や『タイム・マネジメント』（翻訳、1977年）といった著作は、ビジネスパーソンや個人の生産性向上に役立つヒントを提供しました。

さらに、より良く生きるための哲学や具体的な方法論を探求したライフスタイル関連の著書も特徴的です。『ライフ・スタイルのつくり方』(1978年)や『ライフ・パワーを身につける』(1979年)などは、不安定な時代を生き抜くための知的なアプローチを提案しています。交渉術や人間関係の心理に関する翻訳書も多く、ハーブ・コーエンの『交渉の駆け引き・根回し・まとめ方 決定版』(1981年)や、レイモンド・ブランクの『上司・同僚・部下とのつきあいかた』(1982年)などがあり、海外の優れたビジネス・心理学書を日本に紹介する役割も果たしました。

共編著や翻訳書を含め、その活動範囲は非常に広く、ラルフ・フックとの『サービス商売繁昌法』（1983年）、ケネス・ブランチャードとの『1分間マネジャーの時間管理』（1990年）といった、具体的なビジネススキルやマネジメントに関する著作も手がけています。

川勝 久氏の著作や翻訳は、単なる理論に留まらず、東京放送での実務経験や社会心理学者としての深い洞察に基づいた、実践的で具体的な内容が特徴です。これらの活動を通じて、ビジネスパーソンをはじめとする多くの人々に、現代社会を生き抜くための知的なツールや自己成長のヒントを提供し続けました。

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