川口有美子

川口 有美子（かわぐち ゆみこ）

川口有美子は、日本の著名なノンフィクション作家であり、ケア研究家として知られている。彼女は1962年に東京都で生まれ、1985年に東京学芸大学教育学部を卒業し、小学校の教員としてキャリアをスタートしたが、1988年にはその職を離れることになった。これは、彼女の家族が海外での生活を選ぶことになったためである。

海外生活とALSとの出会い

川口氏は、夫の仕事の関係でフィラデルフィアやロンドンに住むことになり、異文化やさまざまな生活様式に触れる機会を得た。1995年、彼女は母親が筋萎縮性側索硬化症（ALS）を発症したことで、彼女の人生は大きな転機を迎える。在宅での介護が必要になった為、川口氏は1996年に帰国し、母親の在宅人工呼吸療法を開始した。
この時期、彼女は多くの困難や葛藤を抱えることになり、その体験を基に支援活動を続けている。

訪問介護事業の設立と家族の在宅療養

2003年、支援費制度が始動したことを受けて、川口氏は訪問介護事業所「有限会社ケアサポートモモ」を設立した。彼女は、母親の在宅療養を家族とヘルパーと共に11年間支え続け、2007年9月には自宅で看取るという経験をした。この体験は彼女の考え方やその後の活動において極めて重要な要素となった。

その後、川口氏は日本ALS協会やNPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会の理事として、ALS患者の支援活動を続けていく。彼女の活動は、患者とその家族が直面する現実に寄り添い、理解を深めることを目的としている。

学問的な研究と業績

2013年、川口氏は立命館大学先端総合学術研究科の博士課程を修了し、博士論文「ALSの人工呼吸療法を巡る葛藤 - ALS/MND国際同盟・日本ALS協会の動向を中心に」を執筆した。この研究は、医療と介護に関する重要な問題提起を行い、深い学問的洞察を与えている。

彼女は著書として『逝かない身体――ALS 的日常を生きる』を2009年に発表し、この作品は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。さらに、博士論文も河上肇賞奨励賞を受賞するなど、その業績は高く評価されている。

主な著書と彼女の影響

川口有美子の著書には、以下のようなものがある。

• - 『末期を超えて ALSとすべての難病にかかわる人たちへ』(2015年)
• - 『在宅人工呼吸器ポケットマニュアル』(2009年)
• - 『特別授業 '死' について話そう』(2013年)
• - 『障害受容からの自由―あなたのあるがままに』(2015年)
• - 『病と障害と、傍らにあった本。』(2020年)

これらの著書を通じて、彼女は介護や医療の現場でのリアルな経験を描写し、多くの人々に感動と理解を与えている。

川口氏は現在も立命館大学の客員研究員として活動しており、医療と介護の分野での知見をさらに深めながら、支援が求められている人々に寄り添う活動を続けている。また、彼女はSNSを通じても多くの情報や支援を発信しており、広く活動を展開している。

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