川崎ローム斜面崩壊実験事故

川崎ローム斜面崩壊実験事故

川崎ローム斜面崩壊実験事故は、1971年11月11日に川崎市生田緑地公園内で発生した悲劇的な出来事です。この事故は、関東ローム台地における崖崩れのメカニズムを解明するための実験中に起こりました。事故により、研究に従事していた専門家や報道関係者ら15名が生き埋めとなり、命を落としました。この事故を記念するため、現在は生田緑地内に慰霊碑が建立されています。

実験の背景

事故が発生する前、科学技術庁はローム台地における崖崩れに関する総合研究を行うために、5500万円の費用を投入し、三カ年計画を進めていました。この研究は、四つの省庁の協力のもとで実施され、生田緑地公園内において、雨量による斜面崩壊の実態を調査するものでした。研究機関が選定した試験地では、斜面に散水を行い、人工的に雨を再現することで、どの程度の雨量で崩壊が起きるかを測定することが目的でした。

実験に向けた準備は1970年から進められ、試験地の斜面角度は30度、影響を観測するために配置されたカメラは斜面の約50メートル下に設置されました。この試験地は、周囲に木立があって慎重に選定されたものですが、地元警察や消防に対する十分な連絡は行われていませんでした。

事故の発生

1971年11月9日、午後3時30分から散水が始まり、実験に使用された水の総量が470ミリメートルに達したのは11月11日の午後3時34分でした。その瞬間、轟音とともに斜面の大規模な崩壊が発生し、崖上部から流れ落ちた土砂が防護柵を突破して、崖下55メートル先にある池まで達しました。この崩壊では約270立方メートルの土砂が流出し、速度は予想以上に速く、関係者を巻き込む大惨事となりました。

結果として、25名が生き埋めになり、その内15名が死亡、10名が重傷を負うという事態に陥りました。事故の瞬間の映像は、死亡したフジテレビのカメラマンによって記録され、後に報道で放映されたこともありました。

事故の原因

事故の原因としては主に、安全対策が不完全だったことが挙げられます。特に報道陣に対する適切な指示や警報がなされていなかったこと、実験当日に地元警察や消防に連絡を取らなかったことが影響しました。参加者が避難できる安全な場所が存在せず、崩壊の流速が予想を大幅に上回ったことも一因です。また、事前のボーリング調査が浅く、ローム層と粘土層の境界に亀裂が見つかっていたことも、事故を引き起こす要因となりました。

司法の取り扱い

事故後、実験に関与していた2名は業務上過失致死傷の罪で起訴されましたが、1987年に横浜地方裁判所によって無罪を言い渡されました。判決では、当時の科学的知識では事故の危険性を事前に予測することが不可能だったとされ、検察は控訴を断念しました。

結論

川崎ローム斜面崩壊実験事故は、科学研究が引き起こす可能性のあるリスクを強く印象付ける事件でした。それ以来、安全対策や事前の調査の重要性が再認識され、今後の研究においては継続的な改善が求められることでしょう。

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