川村琢

川村琢

川村琢（かわむら みがく、1908年3月28日 - 1993年3月19日）は、日本の農学者・経済学者であり、昭和期の農業経済学界において多大な貢献を果たした人物です。北海道大学名誉教授。専門は農業経済学、マルクス経済学であり、特に農産物市場論の研究に力を注ぎました。

生涯

1908年、秋田県大曲市（現在の大仙市）に生まれた川村琢は、1929年に弘前高等学校を卒業後、1932年に東北帝国大学法文学部経済学科を卒業しました。その後、同大学の助手、北海道帝国大学農学部助手を経て、研究者としての道を歩み始めます。

1940年には北海道農業研究会の常任幹事に就任しますが、1942年、北海道農業研究会事件により治安維持法違反容疑で拘禁されるという苦難を経験します。しかし、1945年にGHQの指令により釈放され、その後は北海道農業会農業経営調査課長、北海道信用農業協同組合連合会参事などを歴任しました。

1949年からは教育者としての活動も開始し、各種学校北海学院専任講師、北海道大学法文学部予科専任講師を経て、1953年に北海道大学農学部専任講師となります。1959年には同農学部助教授に昇進し、1962年には教授に就任。農業経済学第三講座を担当し、後進の育成に尽力しました。1963年からは北海道大学評議員も兼任しています。

1961年には、長年の研究の集大成として、学位論文「農産物の商品化構造」を東北大学に提出し、経済学博士の学位を取得しました。

1971年には北海道大学農学部長に就任。同年、北海道大学を停年退官し、名誉教授の称号を授与されました。退官後は、札幌商科大学商学部教授、北海学園大学経済学部教授などを歴任し、教育・研究活動を継続しました。また、1973年には公益法人北海道経済研究所理事長に就任し、地域経済の発展にも貢献しました。

1975年には、日本社会党や日本共産党の推薦を受け、札幌市長選挙に出馬しましたが、惜しくも落選しました。

1979年から1982年まで、北海学園大学開発研究所所長を務め、1982年に北海学園大学を退職。1990年には、長年の功績が認められ、勲三等瑞宝章を受章しました。

1993年3月19日、川村琢は84歳で生涯を閉じました。

研究領域

川村琢の研究は、農業経済学、特にマルクス経済学を基礎とした農産物市場論に集中していました。農産物の商品化構造、主産地形成と商業資本の関係、現代農業と市場問題など、多岐にわたるテーマに取り組みました。理論的な研究だけでなく、実際の農業現場を調査し、その成果を政策提言に活かすなど、実践的な活動も積極的に行いました。

師事

東北帝国大学助手時代には宇野弘蔵に、北海道帝国大学助手時代には高岡熊雄に師事し、それぞれから大きな影響を受けました。

主要著作

『農産物の商品化構造』（三笠書房、1960年）
『主産地形成と商業資本』（北海道大学図書刊行会、1971年）
湯沢誠と共著『現代農業と市場問題』（北海道大学図書刊行会、1976年）
農政史研究会編『戦後北海道農政史』（分担執筆、農山漁村文化協会、1976年）
* 湯沢誠・美土路達雄と共編『農産物市場論　全三巻』（農山漁村文化協会、1977年）

川村琢は、農業経済学の研究と教育に尽力し、多くの後進を育成しました。その業績は、日本の農業経済学の発展に大きく貢献しています。

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