川甚

川甚（かわじん）

川甚は東京都葛飾区柴又に所在する、歴史ある料理店でした。主に海鮮や鰻、鯉といった川魚を使用した料理を提供し、多くの人々に愛されていました。しかし、2021年1月末をもって閉店してしまいました。

歴史

川甚の創業は寛政年間、約1790年頃に遡ります。当初は江戸川の畔に位置し、船から直接店に入れる利便性を持っていました。後に、柴又帝釈天の裏手にある現在の場所に移転しました。

この老舗店は明治・大正時代の文豪たちに愛され、彼らの作品にもよく登場しました。実際の店舗内では、明治や昭和20～30年代の貴重な写真が展示されており、かつて訪れた文豪や文化人のサインも飾られています。2018年には葛飾区内にある老舗煎餅店「神田 淡平」と協力し、うなぎ煎餅を開発したことでも話題になりました。

しかし、2020年以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、売り上げが大幅に減少し、ついに2021年1月31日に閉店することとなりました。閉店後は、葛飾区が土地と建物の取得に動いているという報道もありました。

主なメニュー

川甚は、うな重やコース料理を主なメニューとして提供していました。特にコース料理には、海鮮を使用したものや、季節の食材を用いた豊かな内容があり、一品メニューとしてうな重も選択可能でした。料理は肉料理を含む構成にも対応しており、多様なニーズに応える料理を楽しむことができました。

川甚が登場する作品

川甚は文学作品にも登場しており、著名な作家たちによって描かれました。幸田露伴の小説『付焼刃』や、夏目漱石の『彼岸過迄』、尾崎士郎の『人生劇場』、谷崎潤一郎の『羹』、松本清張の『風の視線』など、名作に川甚が取り上げられました。また、本館は渥美清が主演した映画『男はつらいよ』シリーズの第一作において、登場人物の結婚式の場面としても利用されました。

葛飾区による整備構想

川甚の跡地に関しては、葛飾区が土地と建物の取得を進めており、柴又の文化や街並みを紹介する展示施設の整備を計画しています。川甚の敷地面積は約3400平方メートルで、1964年に建造された4階建ての本館と3階建ての新館がありますが、区の構想では老朽化した本館を解体し、新館を新たな展示施設として改装する可能性が検討されています。

このように、川甚は単なる料理店ではなく、文化的な価値を持つ場所でもあったのです。

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