工場法 (日本)

工場法の概要

工場法（こうじょうほう）は、1911年に公布され、1916年に施行された日本の法律で、工場労働者の保護を目的としています。この法律は1947年に労働基準法が施行されたことにより廃止されましたが、日本の近代的な労働法の基礎を作る重要な役割を果たしました。工場法の主要な内容は、工場労働者の就業制限や業務上の傷病・死亡に対する扶助制度です。

制定の背景

工場法が制定されるまでには、明治時代を通じて多くの労働問題が浮上しました。1881年には内務省から農商務省が分離され、工務局調査課が設置されました。ここで諸外国の労役法や工場条例についての調査が進められました。1887年には草案が作成されましたが、業界からの反対により公表には至りませんでした。

日清戦争以降、工業の発展に伴い労働者の数が増加し、労働運動も活発化しました。特に1897年には労働組合が結成され、労働者の権利を求める動きが強まりました。しかし、政府が作成した職工法案は財界の支持を得られず、廃案となることが続きました。

1909年には再び工場法案が提出されましたが、女子の深夜労働禁止へ強い反対があり、法案は一度撤回されました。1911年、政府は再度法案を修正し、深夜業の禁止を一定期間猶予する形で議会に提出。この結果、1911年3月に工場法は成立しました。

工場法の主な内容

工場法の適用範囲は、当初「常時15人以上の職工を使用する工場」に限られ、その後1923年の改正で「常時10人以上」と拡大されました。しかし、実際には多くの小規模工場が適用除外となり、労働者の保護には不十分でした。

就業年齢と労働時間

工場法では、12歳未満の者の就業を禁止し、15歳未満の女子および年少者の労働時間に制限を設けました。しかし、内容的には不十分で、女子の夜間労働が合法化されていたため、業態によっては実効性が低い状態でした。大正12年の改正では、保護職工の定義が変わり、それに伴い労働時間も見直されました。

扶助制度

また、業務上の傷病や死亡に対する扶助制度が設けられており、労働者やその遺族が経済的に困窮しないような措置が取られました。この扶助制度は、工場労働者の権利をある程度保障するものでした。

健康診断の義務

1942年に施行された健康診断に関する規則は、結核予防の一環として行われ、これが現在の労働安全衛生法の基盤となっています。

終わりに

工場法は、当時の日本における労働者の保護を追求した重要な法律であり、後の労働基準法の制定につながる道筋を作りました。しかし、その適用範囲や内容には限界があり、現代の労働法と比べても不十分な面が多く残っていました。工場法は、労働者の権利や条件がどうあるべきかを考える上での出発点として位置づけられるべきです。

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