左うでの夢

アルバム概要

坂本龍一の3枚目のオリジナルアルバム『左うでの夢』は、1981年10月5日にリリースされました。このアルバムは、坂本自身の個性的な声を強調し、音楽における自己表現が重要であるという考え方が反映されています。本作には10曲が収録されており、そのうち6曲は坂本のヴォーカルがフィーチャーされています。

音楽スタイル

アルバムは、以前の作品と比較してメロディと構成がシンプルになっており、和音の使用を減らすことで、西洋音楽の枠組みからの脱却を試みています。また、ファンク的なリズムにも意識的に距離を置き、“祭りの音楽”というコンセプトが貫かれています。これにより、アルバム全体にユニークな音楽的表現が広がっています。

共同プロデューサーとしてロビン・スコットが参加しており、アルバムのいくつかの曲は、スコットの主導により後に12インチ・シングル『アレンジメント』にアレンジされています。また、制作にはキング・クリムゾンのエイドリアン・ブリューや、高橋幸宏、細野晴臣、仙波清彦といった著名なアーティストも関与しています。

タイトルの由来

アルバムのタイトルは、当初ロビン・スコットによって提案された「同盟」という案が却下された後、矢野顕子の提案によって「左うでの夢」となりました。坂本が左利きであることがタイトルに影響を与えたとされています。加えて、発売時には糸井重里が手掛けた「スナオ・サカモト①」のコピーも付いていました。

収録曲の特徴

1. ぼくのかけら
作詞：糸井重里。淡やな3/4拍子のリズムは、シンプルなメロディが絡み合う構造になっています。この曲は後にダンスリーとの共演アルバム『the End of Asia』で再演されています。

2. サルとユキとゴミのこども
同じく糸井重里が歌詞を手掛け、小道具的な音色を持つシンセ・リフが目を引きます。

3. かちゃくちゃねぇ
矢野顕子が詞を提供したこの曲は、津軽弁で「ごちゃごちゃしている」という意味を持ち、沖縄風のシンプルなメロディを特徴としています。

4. The Garden Of Poppies
力強いパーカッションとシンセベースのリズムに、エイドリアン・ブリューのギターが加わり、エネルギッシュな音世界を形成しています。

5. Relâche
シンプルなリフが主役のこの曲でもブリューのギターが際立っています。後にスコットのヴォーカルが加わり、シングルに収録されています。

6. Tell'em To Me
矢野顕子作詞。サウンドにマリンバが取り入れられ、坂本の歌声が独特のハーモニーを奏でます。

7. Living In The Dark
かしぶち哲郎が歌詞を担当したこの曲は、独自の雰囲気を持ち、聴き応えがあります。

8. Slat Dance
リズムの隙間が特徴のこの曲は、和音が解決せずに不思議な余韻を残します。

9. Venezia
かしぶち哲郎が再度歌詞を手掛け、シンプルなメロディが印象的です。

10. サルの家
リズムボックスを活用した曲で、意外な構成力が感じられます。

発売と再発

1992年、1993年にはMIDIレーベルからCD化され、再リリースされています。音楽のアプローチと独自の視点が交差する『左うでの夢』は、坂本龍一の多面的な音楽世界を示す重要な作品です。

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