巨人の輪郭

巨人の輪郭

『巨人の輪郭』（きょじんのりんかく）は、日本の音楽シーンにおいて多大な影響を与えたシンガーソングライター、尾崎豊が遺したポエトリー・リーディング形式のアルバムです。その英題は『THE OUTLINE OF A GIANT』と名付けられています。この作品は、尾崎の没後となる2006年4月26日に、ソニー・ミュージックレコーズから世に送り出されました。

アルバムの内容と制作背景

このアルバムの基盤となっているのは、尾崎豊自身がパーソナリティを務めていたラジオ番組「誰かのクラクション」での貴重な音源です。この番組は、東海ラジオで1985年10月から1986年3月、そして再び1986年10月から1987年3月にかけて放送されていました。番組の中で尾崎は、自らが書き上げた詩を朗読するコーナーを持っており、そこでは約50編にも及ぶ詩が披露されました。

『巨人の輪郭』は、これらのラジオ放送で語られた詩の中から特に選りすぐられた約50編の語り音源を抜粋して収録しています。さらに、これらの詩の朗読には、新たにオーケストラによるアレンジが加えられており、尾崎の言葉の世界に深みと広がりを与えています。単なる語り音源集ではなく、音楽作品として再構築されている点がこのアルバムの特徴です。

位置づけと制作陣

本作品は、尾崎豊にとって二作目のポエトリー・リーディング・アルバムにあたります。1990年にリリースされた前作『真空の中でも嵐は起こる』に続く形で制作されたもので、同じ形式を踏襲した続編として位置づけられています。

アルバム全体の音楽的な側面は、長年にわたり尾崎のサウンドプロデュースを手がけてきた須藤晃氏と、その息子の編曲家であるTomi Yo氏が担当しています。彼らの手によって、尾崎が朗読する詩の世界観がオーケストラサウンドに乗せて表現されています。

尾崎豊のディスコグラフィーにおける意義

『巨人の輪郭』は、リリースされた2006年時点だけでなく、2013年の時点においても、尾崎豊のキャリアにおいて最後に発表された「オリジナル・アルバム」とされていました。生前は主に歌唱を伴う楽曲を収めたアルバムを発表していた彼にとって、詩の朗読に音楽を添えたこの形式の作品は、その芸術家としての多面性を示す貴重な記録と言えるでしょう。

収録曲

このアルバムには、以下の詩（朗読）が収録されています。全編の作詞は尾崎豊自身によるものです。

歪んだ車輪 - THE TWISTED WHEEL
小さなアートショップ - A LITTLE ART SHOP
悲しみの代償 - THE COMPENSATION OF SORROW
徒競走 - THE WALK RALLY
落ちていく男 - A DESCENDING MAN
したたかな汗 - SOAKED WITH SWEAT
間違えるかもしれない - I MIGHT MAKE A MISTAKE
坂の上の星屑 - THE STARDUST ABOVE THE SLOPE
* 孤独の証明 - THE PROOF OF SOLITUDE

なお、この収録曲の中から「小さなアートショップ」は、2011年にリリースされた尾崎豊のベストアルバム『I LOVE YOU〜BALLAD BEST』にも再収録されています。

『巨人の輪郭』は、歌という形式とは異なる形で尾崎豊の言葉と世界観に触れることができる、ファンにとっては重要な作品の一つです。

もう一度検索