巨人連隊

巨人連隊：兵隊王の夢の跡

巨人連隊、正式名称プロイセン第6歩兵連隊は、フリードリヒ・ヴィルヘルム1世、通称「兵隊王」によって編成された、異様な歩兵連隊です。王は長身の兵士をこよなく愛し、その偏愛がこの特異な部隊を生み出しました。ポツダム巨人軍とも呼ばれ、プロイセンの軍事優先主義を象徴する存在として、当時から注目を集めていました。

狂気の徴兵

フリードリヒ・ヴィルヘルム1世は、即位前から長身の兵士を集めた部隊を組織していました。即位後、彼はその規模を拡大しようと、なりふり構わぬ兵士集めを開始します。王は長身こそ理想の兵士と信じ、国内の徴兵官に長身の男を探させました。長身の男を自ら差し出す者には褒美を与え、その熱意はエスカレートの一途を辿ります。

徴兵官はヨーロッパ全土を駆け巡り、長身の男を血眼になって探しました。並外れた長身の男には破格の契約金や給与を提示し、それでも拒否されれば、誘拐同然の手段でプロイセンへ連行しました。他国の軍隊に所属する兵士ですら、誘拐の対象となりました。当然、国際問題に発展しましたが、王は意に介さず、強制的な手段を躊躇する徴兵官を叱責するほどでした。各国の外交官は、贈り物として長身の兵士を献上するようになり、王はそれを大いに喜びました。

誇示と実情

ポツダム近衛擲弾兵連隊は、通常よりも多い3個大隊で編成され、兵士は全員が擲弾兵でした。他の兵士よりも良い待遇が与えられ、王に気に入られた兵士には家が与えられたり、結婚の世話をされることもありました。王は彼らの肖像画を描かせ、像を彫らせて宮廷に飾りました。連隊はポツダムで閲兵行進を行い、その様子は各国の外交官に公開されました。整然とした行進は彼らを唸らせましたが、その評価は分かれました。プロイセン軍の強大さを感じ取る者もいれば、王の道楽に過ぎないと軽視する者もいました。

莫大な費用をかけて維持された巨人連隊でしたが、その戦闘能力には疑問が持たれていました。身長のみを基準に選抜された兵士の中には、兵士として不適格な者も少なくありませんでした。誘拐されて兵士にされた者たちは脱走を企て、王を殺そうとすることさえありました。閲兵中には、兵士が王に向けて発砲するという事件も発生しました。しかし、それでも王は連隊を廃止しようとはしませんでした。

解隊、そして

フリードリヒ・ヴィルヘルム1世の死後、息子のフリードリヒ2世が即位すると、巨人連隊はその存在意義を失います。フリードリヒ2世は、この不経済な連隊を解隊し、残留を希望する者のみで構成された第6近衛擲弾兵大隊を編成しました。長身の男をかき集めることはなくなり、近衛部隊の役割は、フリードリヒ2世が連隊長を務めていた第15連隊に移りました。各国は、これを新王が軍縮に舵を切った証と見ましたが、フリードリヒ2世は巨人連隊の維持費を軍備増強に充て、その軍事力をさらに強化しました。

巨人大隊は、その後のフリードリヒ2世の戦争に従軍し、他の部隊と同様に活躍しました。しかし、ナポレオン戦争中の1806年、プロイセン軍がイエナ・アウエルシュタットの戦いに敗北すると、巨人大隊はフランス軍に降伏し、解散しました。同年、巨人大隊（旧第6連隊）と第15連隊の残存兵力によって、プロイセン第1近衛歩兵連隊が編成され、その精神は受け継がれていきました。

関連項目

* プロイセン王国

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