巨勢相覧

巨勢相覧（こせのおうみ）は、平安時代中期に活躍した宮廷画家です。詳しい生没年はわかっていませんが、当時の宮廷絵画界において重要な役割を担っていたことは、いくつかの史料から推測できます。名前は相見と表記される場合もあります。

巨勢相覧は、巨勢金岡の子であると伝えられています。巨勢氏は、代々優れた芸術家を輩出した家系として知られており、相覧もその伝統を受け継いだ画家であったと考えられます。しかし、彼の出自や幼少期については、ほとんど記録が残されておらず、謎に包まれています。

相覧の経歴について、わずかながら手がかりとなる史料があります。『大間成文抄』には、延喜元年（901年）に讃岐少目従八位下という官職に就いたという記述が見られます。これは、宮廷における彼の地位を示す重要な情報です。讃岐少目は、宮廷内の比較的低い地位の役職ではありますが、それでも宮廷に仕える立場にあったことを示しており、相覧が宮廷画家として活躍していた可能性を高めます。

相覧の名が最もよく知られているのは、『源氏物語』の絵合の巻における記述です。この巻には、光源氏が主催した絵合の場面が描かれており、そこで登場するのが『竹取物語絵巻』です。詞書（絵の説明文）は紀貫之によって書かれ、絵は巨勢相覧が描いたとされています。この記述は、相覧が実際に『竹取物語絵巻』を描いたことを示す唯一の直接的な証拠です。しかしながら、残念ながら、この絵巻は現存しません。そのため、相覧の画風や画技について、具体的な情報はほとんど残されていません。

『竹取物語絵巻』は、平安時代の絵画を代表する作品の一つであったと推測されています。もし現存していれば、日本の絵画史において重要な位置を占める作品であったことは間違いありません。その絵巻を描いた相覧の才能は、想像をはるかに超えるものだったに違いありません。現存作品がないことは残念ですが、後世の画家たちに与えた影響は計り知れないと考えられます。『源氏物語』の絵合の巻における記述は、相覧という宮廷画家の存在を後世に伝える貴重な史料となっています。

まとめると、巨勢相覧は、生没年不詳ながらも、平安時代中期に活躍した宮廷画家として、その存在が『源氏物語』の絵合の巻などを通して確認できる人物です。彼が描いた『竹取物語絵巻』は現存しませんが、その存在は相覧が優れた才能を持つ画家であったことを示しています。今後の研究によって、彼の生涯や作品に関する新たな情報が明らかになる可能性も期待されます。謎に包まれた巨勢相覧の生涯と、失われた名画『竹取物語絵巻』は、私たちに想像力を掻き立てる、魅力的なテーマです。

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