己斐峠

己斐峠（こいとうげ、または、こいだお）は、広島県広島市西区の己斐上地区と、佐伯区の五月が丘地区を結ぶ、広島県道265号伴広島線上にある標高217メートルの峠である。この峠は、広島市街地西部と郊外を結ぶ重要な連絡路の一つとして機能している。

峠を含む周辺の道路は、全体的に道幅が狭い区間が続く。かつては、山陽自動車道の五日市インターチェンジから広島市中心部方面への主要な抜け道の一つとして利用されており、大型のトラックなども頻繁に通行していた時期があった。しかし、広島高速4号線（広島西風新都線）が開通して以降、交通の流れが変化し、己斐峠を経由する大型車両の通行量は減少傾向にある。公共交通機関としては、エイチ・ディー西広島が運行する五月が丘線がこの峠道を通過している。峠の頂上付近には、旅の安全を願うかのように一体の地蔵が祀られている。

標高が市内中心部よりも高いため、冬季には少ないながらも積雪が見られることがある。積雪時は路面凍結などにより通行に注意が必要となる場合もある。

地形的な特徴としては、峠道自体の距離は比較的短いものの、特に後半部分にかけての斜度が非常に急であるため、車両や自転車、徒歩での通行者にとっては勾配のきつい難所として認識されている。この急斜度を緩和し、道路の勾配を是正するために、峠の頂上部は山を深く切り通す形で整備されている。また、峠の近くには国泰寺が存在する。

己斐峠は、一部では心霊スポットとしても知られている。かつて峠の付近に存在した特定の家屋について、「一家全員が惨殺された」「家族が心中した」といった根拠不明の凄惨な噂が流れ、この家屋が都市伝説的な恐怖の場所として語られ、興味本位で訪れる人々も存在した。

しかし、これらの噂の多くは事実とは異なることが指摘されている。噂の対象となった家屋は、現在は取り壊されて資材置き場となっているが、過去に「一家惨殺」や「一家心中」といった記録は公的な資料などでは確認されていない。さらに、この家屋の所有権は個人のものではなく工務店のものであり、建物の構造や間取りも一般的な住宅というよりは事務所や作業場のような造りであったとされる。

ただし、峠付近では過去に複数の不幸な出来事が実際に発生している。具体的には、車内での心中事案や、樹木を利用した首吊り自殺が発生した事実は確認されている。しかし、これらの痛ましい出来事は、前述の噂の対象となった家屋とは直接的な関連性はなく、また自殺された方々もこの峠周辺の近隣住民ではなかったことが分かっている。このように、己斐峠にまつわる心霊現象や事件についての情報は、事実と根拠のない噂が混在しているのが現状である。

日本の峠一覧、広島県道265号伴広島線、広島県の県道一覧、中国自然歩道などが関連する。

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