市川ジュン

市川ジュン(1949年5月31日 - )は、日本の漫画界において重要な役割を果たした女性漫画家です。東京都新宿区出身で、漫画家の柴田昌弘と結婚しています。

公務員としてのキャリアを経て、1972年、集英社『別冊マーガレット』に掲載された「白い花の涙」で漫画家デビューを果たしました。初期は少女漫画を手掛けていましたが、1980年代半ばからは、活動の場を『office YOU』に移し、歴史漫画へと創作の軸足を移行しました。

市川ジュン作品の特徴として特筆すべきは、歴史を女性の視点から捉え、描いた点です。平安時代から近代に至るまで、幅広い時代を舞台に、数々の歴史物語を創作しました。彼女が描く歴史漫画は、単なる歴史の羅列ではなく、そこに生きる女性たちの感情や葛藤、生き様を深く掘り下げて表現している点が大きな魅力です。時代考証にも気を配りつつ、歴史に新たな光を当てた作品群は、多くの読者から高い評価を得ています。

代表作として挙げられるのは、『陽の末裔』(1985-1989)です。この作品は、市川ジュンが歴史漫画家としての地位を確立する上で重要な役割を果たしました。その他にも、『華の王』(1993-1995)では、鎌倉幕府の重要な人物である北条政子を主人公に、権力闘争や女性の生き様を壮大なスケールで描いています。また、『この星の夜明け』(1996-1997)や『燁輝妃』(1996)など、数々の歴史作品を発表し、それぞれの作品で異なる時代、異なる女性たちの物語を鮮やかに描き出しています。『懐古的洋食事情シリーズ』(1987-)は、歴史とは異なる切り口の作品ですが、独特の視点と丁寧な描写で人気を博しました。

市川ジュンの作品は、単に物語を楽しむだけでなく、歴史への理解を深め、女性たちの生き方に思いを馳せるきっかけを与えてくれます。歴史に興味を持つ人、女性を描いた作品に興味を持つ人、そして感動的な物語を求める人、全ての人々に強くおすすめできる漫画家です。

主な作品リスト

別冊マーガレット（増刊も含む）掲載
白い花の涙（1972）
光と影の日々（1974）
星にきけばいい（1974）
三月の家（1974）
それぞれの旅（1975）
暁の目の娘（1975）
白い炎（1976）
1985年以降
陽の末裔（1985 - 1989）
懐古的洋食事情シリーズ（1987 - ）
華の王（1993 - 1995）※主人公は北条政子
この星の夜明け（1996 - 1997）
燁輝妃（1996）※主人公は高階栄子（丹後局）
黄昏と黎明（2003）
アンタレス（2004）
ひまわり（2005）
鬼国幻想（2008）

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