市川新十郎

市川新十郎について

市川新十郎（いちかわ しんじゅうろう）は、歌舞伎界で名を馳せる重要な役者の名跡で、現在は4代目がこの名を受け継いでいます。市川新十郎の歴史は、3代目から始まり、彼は1867年に生まれ、1929年に亡くなりました。本名は小山元之助です。

3代目市川新十郎の略歴

3代目は1874年に九代目市川團十郎の門下になることで歌舞伎の世界に足を踏み入れ、その後市川福之助と名乗り、初舞台を果たしました。その後、名前を市川團七に改名し、1899年に市川新十郎を名乗るとともに名題に昇進しました。この名跡を持ちながら、彼は小芝居から大歌舞伎まで幅広い活動を行い、特に脇役での演技に定評がありました。

彼は、名優であるがゆえの専門的な知識や、芸の型に対する深い理解を活かし、日本俳優学校で講師を務め、歌舞伎界において重要な指導的役割を果たしました。また、作品の中では「伽羅先代萩」の外記や「助六」の門兵衛などの役を演じることで、その存在感を示しました。さらに、隈取りの保存にも注力し、貴重な芸能資料として名高い『歌舞伎隈取』を共著で発表しました。

兴味深いエピソード

3代目の市川新十郎は、当時の若手俳優たちにとって生き字引のような存在であり、特に六代目尾上菊五郎をはじめとする幹部俳優たちは、彼から多くを学んでいたと言われています。しかし、その芸風にはいくつかの品格に欠ける面があり、晩年には他の優れた俳優たちに押されてしまうこともありました。新十郎は、役者としての情熱を持ちつつも「どんな役でも喜んで演じたい」と語っており、時には苦しい生活を背負いながらも舞台に立つことを望んでいました。しかし日常生活は厳しく、食事は魚のアラが主なものであり、妻は質屋通いを余儀なくされていました。また、内職として隈取りを書くことなどで生活費を稼いでいたともいわれています。

動物好きな面もあった彼は、犬や猫、文鳥などを多く飼っていましたが、関東大震災の際にはすべての動物を逃がして助けたとされています。

4代目市川新十郎

4代目は1969年に生まれ、1990年に国立劇場の歌舞伎俳優研修を修了後、1991年に12代目市川團十郎に入門し市川新七として活動を始めました。彼は徐々に頭角を現し、1996年には国立劇場特別賞を受賞、2005年には日本俳優協会賞奨励賞に輝きました。2008年には3代目の名跡を襲名し、以降、歌舞伎界の新たな伝統の担い手となっています。2012年には、重要無形文化財に認定され、歌舞伎保存の活動にも参加しています。彼の家族には五代目市川米十郎もおり、その脈々とした伝承を感じさせてくれます。

彼の業績は、歌舞伎界の未来にとって重要な意味を持ち、伝統を受け継ぎつつ新しい表現に挑戦する姿勢が評価されています。また、彼の家族や親戚にも多くの著名な人々が含まれ、歌舞伎文化への貢献は今後も続くことでしょう。

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