市村羽左衛門 (10代目)

十代目市村羽左衛門（1748年 - 1799年）は、江戸時代中期、宝暦期から寛政期にかけて活躍した歌舞伎役者です。屋号は菊屋、俳名に亀全を持ちます。九代目市村羽左衛門の息子として生まれ、幼少の頃から歌舞伎の世界に入りました。

初舞台は宝暦8年（1758年）11月、市村七十郎という名前で踏みました。翌年の11月には、父である九代目市村羽左衛門がその名前を襲名した際に、先代が使っていた亀蔵という名前を受け継ぎました。その後、天明8年（1788年）9月、市村座の興行権を取り戻し、十代目市村羽左衛門を襲名、晴れて市村座の座元となりました。これは、長らく控櫓であった桐座から興行権を奪還するという、大きな転換点でした。

しかし、先代からの負債が重くのしかかり、一度は整理がついたものの、再び多額の借金を抱えることになりました。経営は困難を極め、寛政5年（1793年）には、市村座の興行権を再び桐座に譲渡せざるを得ない状況に陥りました。これにより、十代目市村羽左衛門は座元を退き、親類である福地茂兵衛の息子を養子に迎え、十一代目市村羽左衛門として家を継がせることになります。

その後、寛政9年（1797年）には、魚商を営む老人からの援助を受け、借財整理を行い、翌年に市村座は再興を果たしました。しかし、その再興の翌年、十代目市村羽左衛門は世を去りました。役者としての舞台出演は少なかったとされています。歌舞伎界を支えた重要な人物でありながら、その生涯は決して平坦なものではありませんでした。市村座の再興に尽力するも、度重なる負債に苦しんだ波乱万丈な人生でした。


参考文献
野島寿三郎編　『歌舞伎人名事典』（新訂増補）　日外アソシエーツ、2002年

関連項目
市村羽左衛門
* 歌舞伎

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