希望の国のエクソダス

小説「希望の国のエクソダス」

村上龍による『希望の国のエクソダス』は、1998年から2000年にかけて雑誌『文藝春秋』で連載され、2000年7月に刊行された作品です。物語の舞台は、バブル崩壊後の日本経済が停滞する様子が濃厚に描かれた2001年の初夏に設定されており、国の未来に対する閉塞感が漂う中、若者たちの奮闘が描かれています。

あらすじ

物語は、パキスタンの北西辺境州で地雷処理に従事していた日本人少年がCNNによって報じられるシーンから始まります。彼はパシュトゥーン族の衣装を身にまとい、カラシニコフを持った姿でインタビューを受け、「あの国には何もない、もはや死んだ国だ。日本のことを考えることはない」と語ります。この発言は、全国の中学生たちに大きな影響を与え、彼らは集団不登校から一歩踏み出し、自らのネットワーク「ASUNARO」を結成します。

ASUNAROは、インターネットやその他のテクノロジーを駆使して新しいビジネスを展開。数年後、巧妙に外為市場を操作し、巨額の利益を得た彼らは北海道に広大な土地を購入します。30万人規模の集団移住を果たし、自らの手で都市と経済圏を築くことで、「希望だけがない国、日本」から実質的に独立を実現します。

主な登場人物

この物語には多くの個性的なキャラクターが登場します。

• - 関口テツジ: 30代前半のフリーライターで、物語の視点を担う重要なキャラクター。
• - 由美子: 経済部門のライターで、関口と同棲している。
• - 後藤: 関口と共に雑誌ライターとして活動している。
• - 山方: 文部省の若手官僚で、物語に重要な影響を与える人物。
• - 中村秀樹: ASUNAROを組織する「ブルーギャング」のメンバー。
• - 楠田穣一(ポンちゃん): ブルーギャングのリーダー。
• - ナマムギ: 日本を捨て、パシュトゥーン族の中で新しい生活を選ぶ少年。

解説

村上龍は執筆に際して経済や教育などの専門家に取材を行い、その成果は「『希望の国のエクソダス』取材ノート」として刊行されています。この作品は、単なるフィクションではなく、現実の社会状況に対する鋭い批評を含んでいます。

また、本作の主人公は、村上が2011年から2014年にかけて『文藝春秋』に連載した『オールド・テロリスト』にも登場します。『オールド・テロリスト』の世界は、本作の後の時代を描いており、両作品の関連性が印象的です。

刊行リスト

• - 『希望の国のエクソダス』(文藝春秋 2000年7月 ISBN 4163193804)
• - 文庫版（文藝春秋 2002年5月 ISBN 4167190052）
• - 『「希望の国のエクソダス」取材ノート』(文藝春秋 2000年9月 ISBN 4163565302）

このように『希望の国のエクソダス』は、経済の停滞と若者たちの希望の模索をテーマにした、深いメッセージを持つ小説となっています。

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