帝王切開

帝王切開について

帝王切開（ていおうせっかい）は、切開を通じて胎児を取り出す手術方法です。日本では「帝切」や「C-section」とも称され、さまざまな理由で行われます。

語源

「帝王切開」という言葉は、16世紀に成立したフランス語「opération césarienne」を経由し、ラテン語の「sectio caesarea」とドイツ語の「Kaiserschnitt」から直接借用されています。「Kaiserschnitt」は、ドイツ語の「Kaiser」（皇帝）と「Schnitt」（切ること）という2つの語から成り立っています。この語源には古代ローマの法律「遺児法」が関連しており、妊婦が亡くなった場合に胎児を取り出すことが許可されていました。さらに、約1世紀後の大プリニウスの著作により、「カエサル」という名前が帝王切開と結びつく理論が広まりましたが、カエサル自身が帝王切開で生まれた可能性は低いとされています。

歴史

帝王切開の習慣は古代から存在しました。ギリシャ神話にはアポローンが死体から胎児を取り出す話が記録され、王政ローマでも分娩で亡くなった妊婦から胎児を取り出すことが法律で認められていました。これにより、切開による分娩は古代エジプトからアフリカの一部地域まで行われていたことが確認されています。

中世ヨーロッパでは、キリスト教徒たちが妊婦の切開を奨励し、医療技術の進歩に伴って手術の成功率が向上しました。1500年代や1600年代には、帝王切開の技術が進歩し、少しずつ成功例も増えるようになりました。1876年にはイタリアで母子の救命に成功した例があり、20世紀初めには滅菌方法が導入されることで手術のリスクが大幅に低減しました。

方法

腹式帝王切開

現代の帝王切開で最も広く行われる方法で、通常は約1時間で施行されます。麻酔は通常、脊髄くも膜下麻酔または全身麻酔が使用されます。皮膚の切開は主に「縦切開」か「横切開」があり、美容的な配慮から横切開が好まれる傾向にあります。手術中は、胎児の取り出しや子宮の内容物の除去が行われ、出血が確認され処置が施されます。

膣式帝王切開

妊娠中期の特定の状況下で行われることがあるものの、現在ではほとんど実施されていない方法です。

適応

経腟分娩が危険な場合や、急速な出産が求められる状況に関連して、帝王切開が選択されることがあります。特に高リスクとされる症例では、帝王切開の実施が強く推奨されます。

各国の状況

世界保健機関（WHO）は、帝王切開が必要なケースと不必要に行われているケースが共存していると指摘しています。出産における帝王切開の比率は国により異なり、日本では約24.8％、アメリカでは30％に達しています。ブラジルではその数値がさらに高く、2015年には56％に上昇しました。

予後

手術技術の進歩により、帝王切開による母体死亡率は減少していますが、経腟分娩に比べて依然として高い傾向があります。術後は肺塞栓症などの合併症に注意が必要です。帝王切開後の経腟分娩試行（TOLAC）は、決して容易ではなくリスクを伴うため、適切な準備が求められます。

結論

帝王切開は歴史の中で進化してきた医療技術であり、母子の安全を第一に考えた多種多様な適応と手続きが存在します。これからの医療技術の進展が、さらに安全で効果的な出産方法へと繋がることが期待されています。

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