帰宅困難者

帰宅困難者について

定義

帰宅困難者（きたくこんなんしゃ）とは、自然災害、特に地震の発生時に、勤務先や外出先から自宅へ戻ることができなくなった人々を指します。また、一般的に「帰宅難民」とも呼ばれます。

概要

自然災害によって交通機関が機能しなくなる事態が起こると、自宅への道のりがあまりにも長い場合には帰宅を諦める「帰宅断念者」が生じます。その一方で、長距離であっても自宅へ徒歩で帰ることを選ぶ「遠距離徒歩帰宅者」も存在します。日本の内閣府の指針によると、帰宅距離が10キロメートル以内であれば「帰宅可能」とされ、これを超えると「帰宅困難者」と見なされ、20キロメートルまで1キロメートルごとにその割合が10%ずつ増加します。20キロメートルを超える距離にいる人々は皆、帰宅困難者として扱われます。

近代的な都市では公共交通機関が発展したため、企業や学校が存在する中心部から遠く離れて住んでいる人々も少なくありません。このような状況は、特に大規模な災害が発生した際に、自宅に帰ることが非常に難しくなることがあります。特に、東京を含む大都市圏では、その傾向が顕著です。

対策

中央防災会議のガイドラインでは、災害時に帰宅困難者が一斉に帰ろうとすることで、応急活動が妨げられるため、一斉帰宅を控えるよう呼び掛けています。企業も3日分の備蓄を行うことが推奨されています。東京都では、2011年の東日本大震災の教訓を受けて、帰宅抑制を求める条例が2013年に施行されたものの、その内容の認知度が低下しています。

事例

2011年の東日本大震災では、交通機関がほとんど運行を停止し、首都圏で約10万人の帰宅困難者が発生しました。その時、JR東日本は駅構内から利用客を締め出す事態となり、東京都知事への謝罪を余儀なくされました。

また、2011年の台風15号や、2014年の大雪、2018年の大阪府北部地震など、さまざまな自然災害でも多くの帰宅困難者が発生しています。特に、台風15号は帰宅ラッシュ時と重なったため、多大な混乱を引き起こしました。

予想される災害による影響

内閣府の予測によれば、首都圏直下地震が発生した場合、帰宅困難者は650万人に達するとされています。さらに、愛知県名古屋市では、東海地震によって名古屋駅周辺で約1万5000人が帰宅困難になるとの試算も存在します。

その他の事例

災害に限らず、2013年の上海市では年末年始の地下鉄の利用者数が急増し、終電が出た後に数十万人の帰宅困難者が発生しました。また、2024年には山口市で行われたアイドルイベントの終了後、交通渋滞により多くの帰宅困難者が出る事態となりました。

このように、帰宅困難者は自然災害だけでなく、交通機関の混乱や大型イベントによっても発生し得る問題であり、事前対策と地域の協力が求められます。

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