帰巣本能

帰巣本能とは

帰巣本能（きそうほんのう）または帰巣性（きそうせい）は、動物が未知の地域を通過しながら、元いた場所、つまり縄張りや巣に帰るための生まれ持った能力です。この自然の摂理は、様々な生物において研究が進められていますが、依然として多くの謎が残されています。特に、帰巣本能は渡りの際に過去に住んでいた場所を見つけるために重要な役割を果たしています。

例えば、サケは遡上の際に何年も前に生まれた川に戻るとされ、これは帰巣本能によるものと考えられています。また、アカハライモリは遠く離れた場所から元の縄張りに帰る際にもこの能力を利用します。犬もまた帰巣本能を持ち、地磁気を感知する能力や、587回のトラッキング実験の結果、元の道を選ぶ傾向があることが示されています。実験では、399回がトラッキング、223回が新しい道の開拓、50回がその最中に変更されたパターンが確認されています。

航法による帰巣

動物の中には、真の航法を用いて帰巣する種も存在します。航法とは、未知の地域を移動する際に、知っている道路や河川、山などを指標として利用することを指します。例えば、伝書鳩は主に周囲の道路や建物の目印を使って帰巣します。また、ウミガメも海中での移動の際に、特定の目印を頼りに方向を決定します。これらの方法は、対象の動物が既に知っている場所に対してのみ有効です。

磁覚による帰巣

多くの動物は、地球の磁場に基づいて帰巣する経路を見つけ、これを「磁気コンパス」と呼びます。しばしば、地磁気を用いるだけでなく、他の方法と組み合わせて活用するのが普通です。たとえば、鳥やカメは渡りの際に太陽の方角を基にする「太陽コンパス」を使用しています。さらに、ロブスターやモグラのように、磁覚以外に帰巣するための手段を持たない生物も存在します。

天体による帰巣

中には、星を使って帰巣する動物も見受けられます。マダライモリは星が見えるときのみ帰巣が可能です。このように天体を利用する帰巣方法も、動物たちにとって重要な役割を担っています。

嗅覚による帰巣

嗅覚を利用して帰巣する生物も存在します。サンショウウオのいくつかの種は、臭いを以って故郷に戻ることが確認されています。また、サケも自身の生まれた川に戻るために嗅覚を活用しています。

地形学的な記憶による帰巣

地形学的な記憶も、帰巣の際に効果的に利用されることが多いです。つまり、目的地を囲む周囲の環境に関する記憶を基に帰巣する手法です。例えば、比較的下等な生物であるカサガイは、この地形学的な記憶に依存すると言われていますが、その実証には議論の余地があります。

結論

帰巣本能は動物行動学の中でも特に魅力的なテーマであり、多様な方法によって実現されています。科学的な理解が進む中、今後の研究で新しい発見が期待されます。

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