帰郷 (村下孝蔵の曲)

帰郷（村下孝蔵の楽曲）

「帰郷」（ききょう）は、日本のシンガーソングライターである村下孝蔵（むらした こうぞう）によって創られた音楽作品の一つです。この楽曲は、彼の音楽キャリアにおける初期の重要な段階、具体的にはデビューから二年目を迎えた1981年6月21日に、日本のレコード会社であるCBSソニー（現在のソニー・ミュージックレーベルズの一部）より、単独の音楽メディアであるシングルレコードとして正式に発表されました。このシングルは、村下孝蔵にとって通算3枚目にあたる作品として記録されています。

シングル盤の構成

当時の音楽市場で主流であったシングルレコード盤は、通常、メインとなる楽曲をA面に、そしてもう一曲をB面（カップリング曲とも呼ばれる）に収録するという形式をとっていました。この「帰郷」のシングル盤においても同様であり、A面には表題曲である「帰郷」が、そしてB面には「未成年」という楽曲が収められています。これら両楽曲は、いずれも作詞および作曲を村下孝蔵自身が手掛けており、彼自身の言葉と旋律が楽曲の基盤を形成しています。

「帰郷」という楽曲は、そのタイトルが強く示唆するように、自身の故郷や、あるいは過去の青春時代への遠い記憶、そしてそこから物理的・精神的に離れて現在を生きる自身の内面風景などが、村下孝蔵ならではの抒情的な表現で描かれているものと推測されます。この楽曲のサウンド面での具体的なアレンジメントは、外部の音楽家である水谷公生（みずたに こうせい）が担当しました。水谷公生は、村下孝蔵が紡ぎ出したメロディーラインや歌詞の世界観を音楽的に拡げ、楽曲を最終的な形へと仕上げる役割を担っています。

一方、シングル盤のB面に収録された「未成年」もまた、村下孝蔵が作詞・作曲を行ったオリジナル楽曲です。「未成年」の編曲も、「帰郷」と同様に水谷公生の手によって行われました。さらに、「未成年」の制作においては、町支寛二（まちじ かんじ）がコーラスアレンジを担当している点が特筆されます。町支寛二は、他のアーティストへの楽曲提供やアレンジ、レコーディングへの参加など、多岐にわたる音楽活動で知られる人物であり、彼の施したコーラスアレンジが「未成年」という楽曲に独自の色彩と深みを与えています。

アルバム『夢の跡』への収録

シングルとして発売された「帰郷」は、そのリリースから約一年後の1982年に発表された、村下孝蔵にとってセカンドにあたるオリジナルアルバム『夢の跡』（ゆめのあと）の中にも収録されました。アルバム『夢の跡』は、村下孝蔵のキャリア初期における代表的な楽曲を複数含む、彼の音楽性を理解する上で重要な作品集です。このアルバムにおいて「帰郷」は、全10曲の中から9曲目に配置されています。アルバムという形でより多くの楽曲と共に提供されたことで、「帰郷」はシングル購入者だけでなく、アルバムを通じて村下孝蔵の音楽に触れるリスナーにも聴かれる機会が増え、楽曲の認知度や評価を高める一助となりました。

楽曲の持つ意義

「帰郷」は、村下孝蔵が持ち合わせた、日本の原風景や人々の心の機微を描く繊細で普遍的なテーマ性を、キャリアの初期段階から既に確立していたことを示す楽曲の一つと言えます。シングル、そしてそれに続くアルバム『夢の跡』という形で発表されたこの作品は、その後の村下孝蔵の音楽活動の方向性を示唆し、多くのリスナーに共感と感動を与える彼の世界観を形作る上で、基盤となる重要な役割を果たした楽曲として位置づけられています。

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