常民

常民（じょうみん）とは

常民とは、民俗伝承を持つ人々を指す民俗学用語であり、その起源は日本の民俗学の父とも言える柳田國男が初めて使用しました。一般的には「庶民」という言葉に近いニュアンスを持っていますが、定義自体は一義的ではありません。実際、柳田も具体的な定義を設けることはなく、その使い方は時代や研究の進展によって変わってきました。

常民の言葉の背景

この言葉は、元々「山人」に対抗する形で「里人」を指す意味合いを持っていました。つまり、山中で生活しながら自然の恵みを享受していた「山人」に対し、一般的な町村で生活する「里人」を表現するために使われていたのです。柳田が初期の研究においてこの用語を使用した背景には、主に山人が彼の研究対象だったことが影響しています。

しかし、柳田の関心が次第に里人にシフトしていくにつれて、常民の用法も変化し、庶民の生活や文化に対する理解を深めるための重要な概念となっていったのです。彼の研究は日本の一般庶民の生活や文化を掘り下げるものであり、その結果「常民」という言葉には、ただの庶民ではなく、特定の文化的・社会的背景を有する人々を指す意味合いが強くなっていきました。

民俗学への貢献

柳田の研究は、民俗学という学問の礎を築くものであり、「常民」という概念はその発展において欠かせないものとなりました。彼は民俗学を通じて、人々の生活に根ざした伝承や風習の重要性を強調しました。彼のアプローチは民俗学における普遍的な観点を提供し、日本の地域文化への理解を深める助けとなりました。

日本常民文化研究所の設立

1921年には、実業家であり民俗学者でもある渋沢敬三の努力により、アチック・ミューゼアムが創設されました。その後、宮本常一が参加し、民俗学の研究が進められました。1942年には、この研究機関名が「日本常民文化研究所」に変更されました。その後も研究は続けられ、1982年には神奈川大学に移管され、「神奈川大学日本常民文化研究所」として、常民文化に関する研究が引き継がれています。

結論

常民という概念は、単なる民間の人々を指すだけでなく、日本の文化や社会を理解する上で重要な役割を果たしています。柳田國男によるこの言葉の使用は、民俗学の発展に寄与し、多くの研究者たちがその後も常民文化の研究に携わるきっかけとなりました。今日、常民という用語は日常的にはあまり使われませんが、その重要性は今なお色あせることなく、民俗学の分野で重要な位置を占めています。

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