平炉

平炉（へいろ）

平炉とは、左右対称の蓄熱室を持つ反射炉の一種で、低くて平らな形状をしています。この炉は特に鉄の精錬に使用され、発明者のシーメンスとマルタンの名にちなんで「シーメンス＝マルタン炉」とも呼ばれています。また、蓄熱室が二つあるため「蓄熱炉」とも称されることがありますが、これは他の装置との混同を避けるため注意が必要です。

歴史

平炉は、20世紀の中頃まで日本、アメリカ、そしてソ連を含む多くの国々で主流の製鋼法として用いられていました。その理由の一つは、一般的に転炉よりも高品質な鋼を製造できる点です。しかし、戦後に純酸素を使用した転炉（LD転炉）が普及したことにより、平炉の製鋼法はその地位を次第に失いました。特に日本では1963年に転炉鋼の生産量が平炉鋼を上回り、その後、ほとんど生産されなくなりました。現在、平炉鋼の生産は主に東欧の国々で見られます。

構造と機能

1856年にカール・ウィルヘルム・シーメンスがこの炉の構造を発明し、ピエール・エミール・マルタンによって製鋼法が確立されました。平炉による製鋼法は、シーメンス・マルタン法として知られています。原料として使用されるのは主に銑鉄とくず鉄ですが、実際の違いはほとんどありません。

平炉の炉体は鉄制の柱と皮で覆われ、その内部に耐火レンガが張られています。この耐火物は酸性と塩基性に分けられます。酸性平炉は選別した高品質原料を用いることで高級鋼を製造可能ですが、コストの高さから早期に塩基性の炉に移行しました。

精錬プロセス

平炉製鋼の基本的な原料は、銑鉄やくず鉄、石灰石、鉄鉱石などです。これらの材料が炉に投入されると、予熱された空気と燃料ガスまたは重油が炉内に吹き込まれ、高温の炎によって原料が溶解します。この際、排気はもう一方の蓄熱室を予熱する役割を果たします。空気の流れは約10から15分ごとに切り替わり、各蓄熱室の余熱を効果的に活用します。

もともと、精錬にはおよそ6から10時間かかるものの、1960年代には酸素を用いた方法が導入され、精錬時間が4から5時間程度に短縮されることもありました。炉内では溶けた銑鉄中の炭素が熱風や酸化鉄と反応し、一酸化炭素を生成します。さらに、鉄鉱石はマンガン、ケイ素、リン、硫黄を酸化し、生成された酸化物は石灰石と共に除去されます。

最終的に鋼の所定の炭素量が達成されると、余分な酸素を排除するために少量の鉄・シリコン合金やアルミニウムが加えられます。炉の大きさは一回の出鋼量によって示され、一般的には150トンから200トンが普通でしたが、最大で500トンの炉も存在しました。

現在では、平炉製鋼はほとんど行われていませんが、その技術と歴史は依然として製鋼業界における重要な部分であり続けています。

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