平田森三

平田 森三

平田 森三（ひらた もりぞう、1906年2月10日 - 1966年5月8日）は、日本の物理学者であり、特に「割れ目」の研究において知られています。広島県広島市出身で、彼は寺田物理学の伝統を受け継ぎながら、物理学の学問体系の中で独自の研究分野を持ち続けました。

来歴

平田は1928年に東京帝国大学理学部物理学科を卒業後、理化学研究所に入所し、寺田寅彦の指導の下、研究の第一歩を踏み出しました。最初のキャリアでは、東京帝国大学工学部の講師や理学部の助教授を歴任しながら、理化学研究所での研究を続けました。1942年には新設された第二工学部の教授に就任し、応用物理学を担当、その後、1966年に東京大学を定年退官し、上智大学に移りましたが、病により短命に終わりました。

彼の研究の中核は、物理学の中でも特異なテーマである「割れ目」の発生とその伝播に注目した破壊機構の探求でした。このテーマは、主に物性物理学の枠を超えて、独自の視点から観察されることが多く、平田は自らの研究が物理学会の分類においていつも「雑」の部類に入ることを冗談交じりに語っていました。

研究の特徴と成果

平田は、粒子の破壊によって生じる現象を精密に観察し、新たな実験手法や統計的方法を駆使してそのメカニズムを解明しました。その中で、彼はミクロな視点から物質の不確定性を捉え、特にガラスの割れ目が外的条件に影響されない本質的な特性を持っていることを明らかにすることに成功しました。また、彼の割れ目の研究からは、キリンの皮膚に見られるまだら模様の形成メカニズムについても考察が行われ、論争を呼ぶこともありました。

もう一つの彼の業績として、捕鯨用の銛の設計改良が挙げられます。平田は銛の先端を平らにすることで命中率を向上させた「平田銛」を発明し、この革新は物理現象を応用した結果として高く評価されています。

平田はまた、数多くの公的な仕事にも尽力しました。1953年には初の全国共同利用施設として設立された乗鞍岳の宇宙線観測所の初代所長を務め、宇宙線研究の発展にも大きな影響を与えました。その後も物性研究所や東大低温センターの設立に関与し、学会の創設や発展にも貢献しました。

人柄と教育

平田の指導スタイルは、彼が経験豊富な研究者であったことを反映していました。彼は指導を行う際、研究指導者として大局的な視点を示し、後は学生の創意と努力に任せるアプローチを取りました。そのため、彼が直接名前を出さなくても多くの研究が成果を上げることができました。

著書

平田はその業績を通じて多くの著作を残しました。彼の著書は「物理実験を始める人のために」や「キリンのまだら自然界の統計現象」など、物理学の教育や研究に資する内容が特徴です。彼の研究は現在でも新しい視点を提供し続けています。


平田森三は、教育、研究、さらには物理学の発展に寄与した立派な物理学者として、多くの人々に影響を与え続けています。

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