平野拓也 (ジャーナリスト)

平野拓也は1935年に生まれた日本のフリージャーナリストであり、かつては税務官僚として大蔵省に勤務した経歴を持つ人物です。長年の公務を経て退職後、税制や官僚制度、経済問題などをテーマに多くの著作を発表し、活発な評論活動を展開しています。

大阪府大阪市で生まれた平野氏は、1953年に大阪府立豊中高等学校を卒業後、同年中に大蔵省関税局の大阪税関に入省しました。以後、長きにわたり税関職員として勤務。特に税関相談官などの要職を務め、現場での実務経験を積みました。公務に励む傍ら、異色の経歴として、1988年に大阪外国語大学フランス語科に入学し、1993年に卒業しています。これは、勤めながら専門的な知識をさらに深めようとする意欲を示すエピソードであると言えます。1995年、長年勤め上げた税関を退職しました。

税関退職後、平野氏はフリージャーナリストとしての活動を開始します。その活動の中心は、これまでの自身の経験と知見を活かした執筆活動でした。雑誌や単行本を通じて、税金、官僚制度、経済、貿易といった多岐にわたるテーマについて論陣を張りました。

その著作は、公務員時代の経験に基づいた内部からの視点と、ジャーナリストとしての客観的な分析を融合させた内容が特徴です。初期には『税関マル生と闘う書記長が見たイタリア・フランスの街と労働者』（1974年、鳩の森書房）のような労働問題に焦点を当てたものがありますが、退職後の主な著作は、日本の税制と官僚機構に関する批判的考察が中心となります。『貿易革命 亡国から救国の貿易へ』（1996年、白桃書房）では貿易問題に言及し、『納税革命 現行消費税UPは日本国家の自殺行為』（1997年、同文書院インターナショナル）や『日本の消費税はここがまちがい』（1999年、毎日新聞社）では消費税を中心とした税制の問題点を鋭く指摘しました。また、自身の元大蔵省職員という立場から、『ノンキャリアがみた素顔の大蔵省 神話終焉と21世紀の官僚像を探る』（1998年、同文書院）や『大蔵省元相談官「酷税驚愕のしくみ」』（1998年、小学館文庫）、『官僚は失敗に気づかない』（2002年、ちくま新書）、『日本をダメにする税金のカラクリ』（2003年、日本経済新聞社）といった著書で、官僚機構の構造的な問題点や課題について、内部を知る者ならではの視点で論じました。これらの著作を通じて、税金や官僚制度に対する一般市民の理解を深め、問題提起を行うことに貢献しています。特に、ノンキャリア職員として長年現場で勤務した経験は、その後の執筆活動において、組織の表層だけでなく深層部に迫る視座を提供していると言えるでしょう。

平野拓也氏は、公務員としての実務経験と、その後のジャーナリストとしての探究心を融合させ、日本の税制や官僚機構といった社会の根幹に関わる問題に対し、独自の視点から積極的に発言を続けています。その著作は、元官僚という異色の経歴を持つ評論家として、今日においてもなお、日本の社会や経済のあり方を考える上で重要な示唆を与えています。

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