年魚市潟

年魚市潟（あゆちがた）

年魚市潟は、愛知県名古屋市の熱田区から南区にかけて広がっていた干潟の名称です。この地域は古代から「年魚市」と呼ばれ、現在の県名である「愛知」の由来ともされています。この場所は、古事記や万葉集にも言及されており、歴史的な景勝地としても知られています。

概要

年魚市の名は古代の尾張国南東部に由来し、律令制の時代には愛知郡として用いられました。年魚市潟は、その名の通り様々な魚が豊富に水揚げされる土地であったことから、その称号を得たと考えられています。熱田神宮はこの地域の中心にあり、海と陸の交差点として重要な役割を果たしていました。干潟はその広範囲にわたり、鳴海潟をはじめとする地域ごとに異なる呼称が存在しました。

交通手段は、陸路が鎌倉街道、海路は舟を使っての渡しだったようです。特に熱田神宮から松巨島や笠寺観音を訪れたり、松巨島から野並方面に渡ったりすることが盛んに行われていました。また、愛知県名古屋市南区の白毫寺境内には「年魚市潟勝景」と記された石碑が建てられており、かつての美しい景観を示しています。道徳公園内のクジラ像の設立理由も、年魚市潟にクジラの回遊があったことに由来していると考えられています。

歴史

年魚市潟は約7000年前の縄文海進により形成されたとされています。これは海面が約7メートル上昇し、入り江となったことで干潟ができた結果です。万葉集にもこの干潟に触れた歌が詠まれており、「年魚市潟　潮干にけらし　知多の浦に　朝漕ぐ舟も　沖に寄る見ゆ」という歌がその一例です。この歌は、年魚市潟が賑わいを見せていた当時の様子を伝えています。

さらに、高市連黒人による詩「桜田へ 鶴鳴き渡る 年魚市潟 潮干にけらし 鶴鳴き渡る」もあり、現代の南区桜本町周辺で詠まれたとされています。この地名は、現在の名古屋市営地下鉄桜通線の「鶴里駅」にも影響を与えています。

1973年には白毫寺が展望地として名古屋市の名勝に指定されました。これは、年魚市潟の歴史的重要性や自然美を再評価する動きの一環として理解されています。

交通アクセス

年魚市潟のアクセスは、名鉄や名古屋市営地下鉄を利用することが可能です。白毫寺へは、「呼続駅」から徒歩で約6分、「桜駅」から約11分、そして「桜本町駅」からも約11分かかります。これにより、訪れる人々にとってアクセスしやすい場所となっています。

年魚市潟は、歴史や文化の宝庫であると同時に、自然の美しさを後世に伝える重要なスポットです。

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