幾島賢治

愛媛県出身のエンジニアであり化学者である幾島 賢治（いくしま けんじ）氏は、1950年に生まれました。東京工業大学で工学博士の学位を取得しており、エネルギー技術を中心に多岐にわたる分野で顕著な功績を残しています。

卓越した技術開発

幾島氏は、太陽石油株式会社において、石油製品にごく微量ながら含まれる水銀を高精度に除去する装置を発明しました。この革新的な技術は高く評価され、2007年には第44回石油学会技術進歩賞を受賞しています。さらに、この水銀除去技術は国外でも注目され、オマーン王国に対して油田随伴水の浄化への応用が紹介されました。この貢献により、2009年にはオマーン王立スルタン・カブース大学功労賞を授与されています。近年では、この技術の開発に対し、2023年の第9回ものづくり日本大賞において四国経済産業局長賞を受賞しています。

また、地元である愛媛県西条市にあるIHテクノロジー株式会社では、愛媛大学と連携し、空気中の二酸化炭素（CO2）を原料として合成石油を製造するという、未来を見据えた研究開発に取り組んでいます。これは、環境負荷の低減に貢献する可能性を秘めた重要な研究です。

エネルギー未来への提言と国際貢献

幾島氏は、経済産業省所管の一般財団法人石油エネルギー技術センターの主任研究員として、欧米の研究機関や国際石油企業の経営層との交流を通じて、将来のエネルギー像について深く考察しました。水素エネルギー、燃料電池、そしてGas to Liquid（合成石油）といった次世代エネルギーの可能性と、それらが社会に与える影響について提唱し、その知見を広めるために多数の講演や著書の執筆活動を行っています。

さらに、経済産業省所管の財団法人国際石油・ガス協力機関の参事も務め、国際社会における日本の技術や知識の普及にも貢献しました。前述のオマーンでの水銀除去装置の紹介に加え、アラブ首長国連邦（UAE）の教育大臣には、日本の初等教育制度が国家の基盤構築にいかに役立つかを紹介するなど、技術分野にとどまらない国際交流を展開しています。

地域社会への貢献と多彩な活動

幾島氏は、出身地である愛媛県の活性化にも情熱を注いでいます。愛媛新聞社が主催する東京・愛媛クラブや、新居浜市が運営するにいはま倶楽部など、地元の経済界の発展に繋がる活動に積極的に関わっています。また、同じく愛媛県出身でノーベル賞を受賞した中村修二博士とも連携し、愛媛県が認定する独自の技術や技能である「えひめスゴ技」を世界に発信する活動にも力を入れています。

その活動は技術・経済分野にとどまらず、文化的な側面にも及びます。時代小説作家である井川香四郎氏の推薦を受け、社団法人日本放送作家協会の会員としても活動しています。FMラヂオバリバリでは、「ドクターイクシマの『明日のエコより今日のエコ』」という番組を企画、構成、制作し、自らパーソナリティも務めています。この番組では、環境問題を分かりやすく伝えることに注力しており、番組内で使用される楽曲の制作も手掛けています。瑞希祐作氏との共作による「アクアの星」「Mary Go Around!」「エール」「Step 'in」といった楽曲を生み出しています。

広範な執筆・研究活動

幾島氏は、専門分野に関する多くの著書や学術論文を発表しています。エネルギー、環境、化学プロセスに関する深い知識を体系的にまとめた単著や、専門家との共著による書籍は多数に上り、研究者や実務家にとって貴重な情報源となっています。査読付き論文や査読なしの論文、国内外での講演活動も活発に行っており、その研究成果や知見を広く共有しています。

まとめ

幾島賢治氏は、エンジニア・化学者として革新的な技術開発を推進する傍ら、将来のエネルギー像を描き、国際社会や地域社会の発展にも貢献してきました。教育、文化活動にも関わるその多角的な活動は、技術と社会の架け橋として、幅広い分野に影響を与え続けています。

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