広瀬惟然

広瀬惟然：口語調俳句の先駆者、芭蕉門下の異才

広瀬惟然（ひろせ いぜん / ひろせ いねん、慶安元年（1648年）? - 宝永8年2月9日（1711年3月27日））は、江戸時代中期に活躍した俳人です。美濃国関（現在の岐阜県関市）で酒造業を営む家に生まれ、一時は名古屋の商家に奉公に出ますが、後に故郷へ戻り出家しました。

芭蕉との出会いと俳諧への傾倒

惟然の人生を大きく変えたのは、松尾芭蕉との出会いです。貞享5年（1688年）、芭蕉が『笈の小文』の旅を終えて岐阜に滞在した際、惟然は芭蕉に師事し門下となりました。翌年には『奥の細道』の旅を終えた芭蕉を大垣に訪ね、その後関西に滞在した芭蕉に近侍し、俳諧の道を深めていきます。元禄7年（1694年）には、自らの句集『藤の実』を刊行し、俳人としての名声を確立しました。

独自の俳風：口語調と擬音の प्रयोग

惟然の俳句の特徴は、何と言ってもその口語調の表現と、擬音を大胆に取り入れた点にあります。当時の俳句は、古典的な表現や格式を重んじる傾向がありましたが、惟然は日常的な言葉や擬音を用いることで、より親しみやすく、生き生きとした句を作り出しました。

惟然の句例

水鳥やむかふの岸へつういつうい
水さつと鳥よふはふはふうはふは
きりぎりすさあとらまへたはあとんた

これらの句に見られるように、惟然は「つういつうい」「ふはふは」「あとんた」といった擬音を効果的に 사용することで、情景を鮮やかに描き出し、読者に強い印象を与えます。この斬新な試みは、当時の俳壇において異彩を放ち、後の俳句に大きな影響を与えました。

芭蕉追善と晩年

芭蕉没後、惟然は「奥の細道」を逆順に辿る旅に出るなど、芭蕉への追慕の念を深めました。元禄15年（1702年）頃からは、芭蕉の発句に和賛をつけた「風羅念仏」を唱え、芭蕉の追善行脚を行いました。晩年は美濃に戻り、弁慶庵に住み、静かに余生を送りました。

惟然を偲ぶ：弁慶庵-惟然記念館

現在、岐阜県関市には、弁慶庵-惟然記念館が設けられ、惟然の遺品や俳諧関係の資料が展示されています。惟然の足跡を辿り、その俳句の世界に触れることができるでしょう。

弁慶庵-惟然記念館

所在地：関市西日吉町50番地1（関善光寺の隣）
アクセス：
岐阜バス：新関バス停から徒歩10分
* 長良川鉄道：関駅下車、徒歩5分

広瀬惟然は、口語調俳句の先駆けとして、また芭蕉門下の異才として、俳句史にその名を刻んでいます。その作品は、現代においても新鮮な感動を与え、多くの人々に親しまれています。

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