広瀬正

広瀬 正（ひろせ ただし）

広瀬正は、1924年9月30日に東京で生まれ、小説家、SF作家、推理作家、ジャズ・サックス奏者、さらにはクラシックカーモデルの製作者としても知られる人物です。彼は「時に憑かれた作家」とも称され、多くの時間をテーマにしたSF作品を残しました。本名は広瀬祥吉です。

略歴

広瀬の人生は1930年代から始まり、彼が生まれたのは東京市京橋区（現・東京都中央区）。1942年に日本大学工学部建築科に入学しましたが、彼の本当の情熱は物語を語ることにありました。1952年にはジャズバンド「広瀬正とスカイトーンズ」を結成し、音楽の道にも足を踏み入れました。しかし、1960年にバンドは借金問題により解散し、彼は文筆の道へと進むことになります。

1961年、彼はデビュー作『殺そうとした』を雑誌『宝石』に発表し、その後、同人誌『宇宙塵』に参加。1963年には日本推理作家協会の会員となり、1965年からは『宇宙塵』に彼の処女長編『マイナス・ゼロ』を連載しました。同時期には、パロディ創作集団「パロディ・ギャング」にも参加し、仲間と共に作品を発表していきました。

彼の作家としての活動は1970年に『マイナス・ゼロ』の刊行により再開され、直木賞の候補にも選ばれましたが残念ながら受賞できませんでした。1971年には『ツィス』や『エロス』が刊行され、これも直木賞の候補に挙がりましたが、これまた落選。直木賞に選ばれたのは司馬遼太郎だけであり、他の委員は彼の作品に反対の意見を持っていました。

不運にも、彼は1972年3月9日に心臓発作で急逝。享年47歳でした。葬儀には多くのSF作家が参列し、彼の棺には「タイム・マシン搭乗者」と書かれていました。彼の作品には、後の世代に影響を与える多くの要素が含まれており、今なお日本のSF文学における重要な位置を占めています。

エピソード

広瀬正の作品には面白いエピソードが多数あります。日活時代の映画監督藤田敏八は『マイナス・ゼロ』を映画化するために、彼と共同で脚本を書いたことがありました。しかし、予算の関係でプロジェクトは頓挫し、その脚本は最終的に彼の棺に納められることとなりました。この脚本は、1972年の『宇宙塵』に全文掲載されており、原作から大幅に改変がなされていたと伝えられています。

彼の作品は、テレビでも広く知られるようになり、1964年から1965年にかけて放映されたアニメ「ビッグX」や、他の多くの作品の脚本も担当しました。さらに彼の影響力は、短編小説『タイムマシンのつくり方』や『鏡の国のアリス』、推理小説『T型フォード殺人事件』に及びます。これらの作品は蔵書としての価値もあり、後世の読者に引き継がれています。

広瀬正の作品とその人生は、今後も新しい読者にとって魅力的なものとなるでしょう。彼の多彩な才能とクリエイティビティは、決して色褪せることはありません。

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