府中多摩スタジオ

府中多摩スタジオ

東京都府中市に設けられていた「府中多摩スタジオ」（ふちゅうたまスタジオ）は、映像作品、特にテレビドラマの制作に用いられた施設です。その名称から讀賣テレビ放送がかつて保有していた多摩スタジオと混同されることがありますが、両者の間に直接的な関連性は一切ありません。

このスタジオは、かつて日本のテレビ番組制作会社である大映テレビが主要な所有者でした。大映テレビは、当時の日本のテレビ業界において、多くの連続ドラマ作品を精力的に制作しており、府中多摩スタジオはその大量制作を支えるための重要な拠点の一つとして機能していました。他の大規模な撮影所と比較すると、敷地や施設はそれほど広くはありませんでしたが、効率的な運用により多数の番組が生み出されたのです。

スタジオの地理的な特徴として、周辺の環境がドラマのロケーション撮影に適していた点が挙げられます。特に、近隣の中河原駅を中心とするエリアは、スタジオでのセット撮影と組み合わせて頻繁に活用され、多くの作品にその景観が映し出されました。これにより、スタジオ内部だけでなく、地域全体がドラマ制作の舞台の一部となっていました。

時間の経過とともに、府中多摩スタジオの利用状況にも変化が現れます。当初は大映テレビの作品が中心でしたが、次第に他社の制作する様々なジャンルの映像作品にも利用される機会が増加していきました。そして、スタジオは大映テレビの経営から離れ、独立した運営形態である「有限会社府中多摩スタジオ」として活動を続けることになります。

しかし、この施設の歴史は永くは続きませんでした。2008年1月頃には、惜しまれつつもスタジオ施設は取り壊され、その物理的な存在を終えました。日本の映像制作を支えた場所の一つが、こうして姿を消したのです。

府中多摩スタジオでは、その稼働期間中に多くのテレビドラマやその他の映像作品が撮影されました。以下に、その代表的な作品の一部を挙げます。

『MAGISTER NEGI MAGI 魔法先生ネギま!』
『はだしのゲン』（2007年に放送されたテレビドラマ版）
『海猿』（フジテレビ系列で放送された連続テレビドラマシリーズ）
『ダンドリ。』（2006年にフジテレビ系列で放送された連続テレビドラマ）
『世にも奇妙な物語』（2007年秋の特別編に含まれるエピソード「ゴミ女」）
『佐賀のがばいばあちゃん』（フジテレビ系列で放送されたテレビドラマ版）

これらの作品は、府中多摩スタジオが日本のテレビドラマ史において果たした役割の一端を示しています。大規模撮影所とは異なる規模ながらも、独自の歴史を持ち、数多くの映像作品の誕生に貢献したこのスタジオは、日本のテレビ文化の記憶の一部として位置づけられるでしょう。

もう一度検索