座布団の舞

座布団の舞（ざぶとんのまい）

座布団の舞とは、大相撲の取り組みにおいて、横綱が通常格下の力士に敗北した場合に観客が自分の座布団を土俵に投げる行為を指します。この行為は、単に横綱が負けたことへの驚きや衝撃を表すものであり、観客の感情が直接的に表現される瞬間とも言えます。

歴史的背景

座布団を投げる文化の起源は、17世紀半ばの投げ纏頭（はな）に遡り、芝居小屋などで盛んに行われ、その後18世紀初頭に相撲界に定着しました。明治時代には、観客が好きな力士にご祝儀を捧げる意味で羽織や帽子を投げる風習があり、これが「投げ花」と呼ばれていました。しかし、1909年に初代両国国技館が完成すると、この行為は正式に禁止され、見られなくなりました。この投げ花の慣習は、後に懸賞金の導入に繋がったとされています。

その後、座布団を投げる行為が一般化し、特に1917年の千秋楽、東横綱の太刀山が西大関の大錦に敗れた際、観客が興奮のあまり座布団だけでなく、帯や羽織、さらには灰皿や蜜柑までも投げ込む騒動が起きました。また、1939年には、安藝ノ海が双葉山に勝利した際に大量の座布団が舞ったことが記憶されています。

現代の座布団の舞

現在では、座布団の舞は主に横綱同士の取り組みにおいて行われ、特に金星が出る際にはその傾向が強いです。しかし、座布団が投げられることによる怪我や事故の危険性が指摘されているため、館内では座布団を投げないようにと注意喚起が行われています。実際に、座布団が行司や観客に当たって怪我をした事例もあり、2007年以降は注意書きが取組表に印刷されています。

「新型座布団」の導入によって、観客が座布団を投げることが難しくなる取り組みもありました。2008年には2人用の座布団が導入され、重量も増加したことで、実際にはこの座布団が飛ぶことは少なくなりました。しかし、過去の取り組みにおいては座布団舞が生じ、観客の情熱が表現されていました。特に、2022年には久しぶりに座布団が舞ったとされ、観客の熱気が再燃したことを示唆しています。

注意事項と規制

大相撲の試合中に座布団を投げる行為は基本的に禁止されており、実際の場面では館内アナウンスが行われています。この際、観客に対して物を投げないよう勧告されます。特に、過去には観客が座布団を投げたことにより重大な事故が発生したこともあり、警察への通報が必要とされる場合もあります。

結論

座布団の舞は日本の相撲文化における一種の風物詩であり、観客の情熱を映し出す象徴的な行為として存在しますが、観客の安全を考慮しなければならないという現実もあります。そのため、今後も座布団を飛ばすことが難しい状況が続く中で、ファンの情熱をどのように表現していくかが重要な課題となるでしょう。

もう一度検索