庶民院議長 (イギリス)

英国庶民院議長：議会の舵取り役

英国議会下院、庶民院の議長は、その威厳ある立場から、英国政治において極めて重要な役割を担っています。通称「スピーカー」と呼ばれる議長は、下院の会議を主宰し、議員の発言を調整し、審議される議案の選択権を有します。議会の秩序維持は議長の主要な責務であり、規則違反の議員には罰則を科す権限も持ちます。金銭法案の認定権など、大きな権限を有する一方、その行使にあたっては中立公正を保ち、先例に則って慎重に行動することが求められます。このため、慣例として議長は所属政党を離脱します。

議長の選出：中立性と伝統

議長の選出は、政府および野党双方の信頼を得られる人物を選ぶという点で、独特の様相を呈します。政府や与党との繋がりがあまり深くなく、長年の経験と重鎮としての威厳を備えた議員が好まれます。大臣経験者などは敬遠される傾向があります。任期は庶民院の解散までですが、総選挙後も希望する限りは全会一致で再選される慣例があります。そのため、政権交代があっても議長が交代するとは限りませんし、議長の所属政党と与党が一致するとは限りません。

総選挙の際には、主要政党（保守党、労働党、自由民主党など）は、議長の選挙区に候補者を擁立しないという配慮が見られます。ただし、地域政党や小規模政党が対抗馬を立てることはあり、選挙戦が行われる場合もあります。

議長の選出方法は、歴史的に変化を遂げてきました。かつては、主要政党からそれぞれ1名ずつ候補者を擁立し、その2名の中から投票で議長を選出していました。しかし、2000年の選挙では、複数の候補者が立候補し、選出方法の変更を促す事態となりました。2009年以降は、全候補者を対象とした無記名投票を行い、過半数を獲得した候補が議長に選出される仕組みとなっています。出馬には一定数の議員からの推薦が必要で、その推薦には一定の制約が設けられています。

伝統と慣習：議長の象徴性

かつては、法服やかつらを着用する慣習がありましたが、1992年に女性として初めて議長となったベティ・ブースロイドがかつらの着用をやめ、以降は簡素化されています。また、近年では服装も簡略化が進んでいます。

新議長選出時には、複数の議員が新議長を壇上へ導くという慣習があります。これは、かつて議長が国王と対立したり、議員に拉致されたりするなど、危険な目に遭うことがあった歴史に由来します。現在では議長の身の危険はなくなっていますが、この慣習は歴史的な出来事を象徴的に再現するものです。

議長の一覧と今後の展望

（議長の一覧は、本稿では省略します。必要であれば、別途資料を参照ください。）

英国庶民院議長は、議会の秩序維持、中立的な立場からの運営、そして歴史と伝統を踏まえた独特の選出方法など、その役割と地位は英国政治において非常に重要です。今後も、議会政治の安定と発展に大きく貢献していくことが期待されます。

もう一度検索