廃園の鬼

廃園の鬼

『廃園の鬼』（はいえんのおに）は、日本の著名な推理作家、横溝正史による短編小説です。本作は1955年、雑誌『オール讀物』6月号で初めて発表され、その後角川文庫『壺中美人』や春陽文庫『魔女の暦』に収録されています。この作品は、金田一耕助シリーズの一部分であり、特に強い印象を与えるストーリーが展開されます。

概要と舞台設定

物語の舞台は、よく知られた建築法を無視して建設された奇妙な屋敷、つまり「化け物屋敷」として知られる場所です。この屋敷は、その不均衡な設計により恐怖を引き起こし、後の綾辻行人の「館シリーズ」に影響を与えたとされます。物の影や音が、鬼のような雰囲気を生み出しているこの屋敷で、金田一は驚くべき事件に巻き込まれます。

あらすじ

東京で立て続けに遭遇した難事件を解決した金田一耕助は、静養を兼ねて信州那須市に旅行します。そこで、かつての知り合いである那須署の橘署長から、T高原のホテルに招かれます。ホテルには、元レコード歌手の高柳加寿子や、彼女の夫である教授、高柳慎吾、その弟子加納史郎といった人物たちが宿泊していました。彼らとの再会を楽しむ金田一でしたが、事態は予想もしない方向へ進んでいきます。

金田一と橘が高原の崖下にある不気味な屋敷を訪れると、そこでかつて病死した建築家が設計した奇妙な建物であることがわかります。屋敷は未完のまま放置され、化け物屋敷としての名を馳せていました。物語は、加寿子の元夫である映画監督・伊吹雄三がロケ隊を連れて訪れることでさらに盛り上がります。更に、加寿子の2度目の配偶者である新聞記者・都築弘も加わり、少しずつ不穏な空気が漂い始めます。

ある日、金田一と橘がベランダで朝食を摂っていると、目の前で信じられない光景が繰り広げられます。展望台で男が女を掴み、無理矢理投げ落とすところを目撃してしまうのです。急いで化け物屋敷に向かうと、加寿子の死体が発見されます。しかし、現場にいた全員がアリバイを主張しあい、事件は解決を見ないまま迷宮入りとなります。

その後、周囲の人々はこの屋敷に「鬼」が住んでいると噂するようになり、1年後、高柳は金田一の手記を読み解くことでこの事件の真実に近づこうとします。

登場人物

• - 金田一耕助：私立探偵。
• - 橘：長野県警那須署の署長。
• - 原信造：屋敷を建設した故人の建築家。
• - 高柳慎吾：元S大の教授。
• - 高柳加寿子：引退したレコード歌手。
• - 伊吹雄三：加寿子の初夫、映画監督。
• - 都築弘：加寿子の2度目の夫、新聞記者。
• - 加納史郎：高柳の弟子。
• - 佐竹恵子：加寿子の友人。
• - 小泉玄蔵：高柳の友人で元教授。

この小説は、金田一の探偵としての手腕が光る作品であり、人間の感情や人間関係が複雑に絡み合う様子が描かれています。その独特の雰囲気と緊張感は、読者に強い印象を残すことでしょう。

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