廬山会議

廬山会議：大躍進政策の失敗と毛沢東の権力掌握

1959年7月から8月にかけて中国江西省廬山で開かれた廬山会議は、中国共産党の歴史において極めて重要な転換点となった会議です。この会議は、中国共産党中央政治局拡大会議と第8期第8回中央委員会全体会議（8中全会）の総称であり、毛沢東が推進した大躍進政策の失敗が露呈した後の対応を協議する場となりました。廬山は中国共産党幹部の避暑地として知られており、会議の開催地として選ばれました。

会議開催に至る背景

1958年に開始された大躍進政策は、農業生産の大幅な増加を目指した政策でしたが、実際には多くの問題を引き起こしました。農村部では水利建設や鉄鋼生産に労働力が集中し、食糧生産が大幅に減少。深刻な飢餓が発生する事態に陥りました。

1958年11月の第8期第6回中央委員会全体会議（6中全会）で、毛沢東は大躍進政策の失敗の責任を取って国家主席を辞任。翌1959年には劉少奇が国家主席に選出され、毛沢東の権威は低下しつつありました。しかし、毛沢東自身も大躍進政策の行き過ぎを認識しており、政策修正の必要性を訴えていました。廬山会議は、この政策修正のための機会として期待されていました。

彭徳懐の批判と毛沢東の反撃

会議では、国防部長であった彭徳懐が毛沢東に書簡を送付し、大躍進政策の誤りを指摘しました。彭徳懐は総路線自体は正しかったとしながらも、政策の進め方における急進的な側面や、目標設定の過剰さを批判しました。

この書簡は毛沢東によって会議参加者に配布され、激しい論争の火種となりました。毛沢東は彭徳懐の批判を、自身の権威に挑戦する行為と捉え、激しく反論しました。彭徳懐の批判に加え、黄克誠、周小舟、張聞天らも同様の意見を表明したことで、毛沢東の権威は更に脅かされることになりました。

毛沢東は、彭徳懐の批判を「ブルジョワジーの動揺性」や「党に対する攻撃」であると断定し、会議の論調は完全に毛沢東有利へと傾いていきました。多くの参加者は毛沢東への支持を表明し、彭徳懐は失脚へと追い込まれました。

8中全会と「彭徳懐反党集団」

8月2日に開始された8中全会では、彭徳懐、黄克誠、周小舟、張聞天の4人が「彭徳懐反党集団」として糾弾されました。この4人は大躍進政策を批判し、経済発展に反対したとして非難され、党内での地位を失いました。彭徳懐の国防部長と中央軍事委員会副主席のポストには林彪が就任しました。

毛沢東は会議の閉会にあたり、中国における階級闘争の長期化を強調。会議は、毛沢東の権力強化と、大躍進政策の継続、さらには批判勢力の弾圧へと繋がっていったのです。

会議後の影響

廬山会議後、中国では「右傾機会主義者」の弾圧が強化されました。300万人以上が右傾機会主義とみなされ、職を失うなど大きな影響を受けました。経済政策の修正も阻まれ、中国経済は更なる悪化へと突き進みます。

劉少奇は当初大躍進政策を支持していましたが、後にその誤りを認めました。しかし、毛沢東は自身の政策に固執し、劉少奇との関係も悪化していきました。この対立は後の文化大革命へと繋がる要因の一つとなりました。

結論

廬山会議は、大躍進政策の失敗を巡る権力闘争が激化した結果、毛沢東の独裁体制が強化された象徴的な出来事でした。この会議を機に、中国共産党内での批判や異論は封じ込められ、中国社会は閉鎖的な雰囲気へと包まれていくことになります。廬山会議は、中国共産党の歴史、ひいては中国現代史を理解する上で、非常に重要な意味を持つ出来事です。

もう一度検索