建基法不況

建基法不況とは

建基法不況（けんきほうふきょう）とは、2007年6月20日に施行された改正建築基準法（平成18年法律第92号）によって、日本の建設業界が混乱し、経済全体が減速した状況を指します。この不況は、改正建築基準法不況、国交省不況、コンプライアンス不況とも呼ばれ、当時の国土交通大臣である冬柴鐵三氏の名前から「冬柴不況」と呼ぶメディアもありました。

経済への影響

2007年初め、日本政府は2007年度の国内総生産（GDP）を521.9兆円と見込んでいましたが、年末には516.0兆円に下方修正しました。実質経済成長率は当初の2.0%増から1.3%増へ、名目経済成長率は2.2%増から0.8%増へと大幅に引き下げられました。この下方修正の主な原因は、町村信孝内閣官房長官（当時）によると、改正建築基準法によるものであり、住宅着工数の減少や建設関連投資の停滞が大きな要因でした。

法改正の背景

2005年に発覚した一級建築士による構造計算書偽造問題が、改正の直接的なきっかけとなりました。この問題を受け、政府は建築物の安全性確保を目的とした建築基準法改正案を2006年3月に閣議決定し、国会に提出しました。一方、民主党も独自の改正案を提出しましたが、最終的に政府案が可決・成立しました。

法改正の内容と施行

改正法では、建築確認における構造計算適合性判定制度の導入や、工事検査の厳格化が盛り込まれました。しかし、法改正の準備不足から、実務に関するガイドラインやチェックリストが施行直前に示されたり、構造計算用プログラムの開発が遅れたりするなど、現場は大きな混乱に見舞われました。さらに、過剰な二重チェックなどにより審査が長期化し、住宅着工数は激減しました。

不況の拡大

住宅着工数の減少は、建設会社だけでなく、セメント、鉄鋼、木材などの建材メーカー、そして日雇い労働者にも悪影響を及ぼしました。この影響は欧米のサブプライム住宅ローン危機よりも深刻で、日本の株価は低迷しました。

政府の対応と謝罪

当時の町村官房長官は、GDP下方修正の主な原因が建築基準法改正にあると認め、冬柴国土交通相と福田康夫首相も、法改正に伴う混乱と国民経済への影響について謝罪しました。政府は対策を講じましたが、住宅着工数は改正前の水準には戻りませんでした。

リーマンショックの影響

建基法不況の最中、2008年9月にはリーマン・ショックが発生し、日本経済は更なる打撃を受けました。住宅着工数はさらに落ち込み、回復には数年を要しました。

まとめ

建基法不況は、法改正の準備不足、過剰な規制、そして経済情勢の悪化が重なり、深刻な不況を引き起こした事例です。この経験から、法改正を行う際は、慎重な準備と、影響を十分に考慮した上で進める必要があることが示唆されます。

関連項目

構造計算書偽造問題
建築確認
建築確認申請
貸金業法
金融商品取引法
官製不況
2007年の政治
2008年の政治
第169回国会

参考文献

日経アーキテクチュア 2007年10月22日号 現場ルポ 建基法不況
日経アーキテクチュア 2007年11月26日号 続・建基法不況

外部リンク

建築基準法改正リンク - ウェイバックマシン
* 木村剛. “ゴーログ　建築基準法改悪：コンプライアンス不況が日本を滅ぼす”.

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