弔鐘はるかなり

『弔鐘はるかなり』

『弔鐘はるかなり』は、著者の北方謙三が手掛けた長編ハードボイルド小説であり、彼にとってのデビュー作となります。この作品を通じて、北方は純文学からハードボイルドの世界へと移行し、以後の作家活動への新たな一歩を踏み出しました。

作家と作品の背景

北方謙三は大学時代から純文学を執筆してきましたが、彼にとっての「本当に書きたいものを書くラストチャンス」として長編エンターテイメントに挑戦しました。初めての長編作品である『弔鐘はるかなり』は、もともとは『第二誕生日』というタイトルで書かれた作品を改題したものです。1981年に集英社から出版され、いきなり長編デビューを果たしたことは特異な出来事と言えるでしょう。

作品の帯には「ハードボイルドの新星」とのキャッチコピーが記され、多くの読者の注目を集めました。北方は、『弔鐘はるかなり』の発表により純文学からの決別を果たし、以降は『ブラディ・ドール』シリーズや『檻』など数多のベストセラーを世に出し、日本を代表するハードボイルド作家として知られるようになります。ただし、当初はハードボイルドという意識はなく、むしろ日活映画風のアクションを意識していたとのことです。

あらすじ

この物語は、元刑事がかつての敵を追い詰めるところから始まります。元刑事という立場から、彼の心の中には様々な思いが交錯しており、敵との再会は単なる復讐劇にとどまらず、4年前の謎の事件に潜む黒幕の存在へとつながっていきます。

このストーリーは緊迫感とドラマを生み出し、ページをめくる手が止まらなくなります。サスペンスフルな展開に加え、登場人物たちのバックストーリーや複雑な人間関係が描かれることで、単なるアクション小説に留まらない深みが生まれています。

主な登場人物

本作に登場する人物たちは、個性的で魅力的なキャラクターに満ちています。元刑事の主人公は過去のトラウマと向き合いながら、事件の真相を解き明かすために奮闘します。彼のかつての敵との対峙は、肉体的な闘争だけでなく、精神的な葛藤も描かれており、読者にその緊張感を伝えることに成功しています。

出版履歴

“弔鐘はるかなり”は1981年に集英社から単行本として発刊され、その後1985年には文庫版も登場しました。また、影丸譲也による漫画版も製作され、全4巻が実業之日本社から刊行されました。その中で、1984年から1985年にかけて4巻にわたり物語が展開されました。

この作品は日本の現代小説における重要な位置を占めており、その後の北方の作品群にも大きな影響を与えました。北方謙三の作品は、今や多くの読者にとって欠かせないものとなっており、『弔鐘はるかなり』はその起点といえる作品です。

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