引両紋

引両紋（ひきりょうもん）

引両紋は、平行した線を基にした日本の伝統的な家紋であり、特に足利氏によって用いられました。この家紋は、室町幕府の象徴としての役割も果たし、特に「丸に二つ引」というデザインが有名です。これは、足利将軍家の権威を象徴するものとして広く知られています。

由来

引両紋は、歴史の中で陣幕や楯、母衣などに描かれていました。特に平家物語には「二つ引両のほろ（母衣）」が初めて描かれており、引両の文字は平安時代から存在していますが、その具体的な姿を示す説はいくつかあります。例えば、新井白石は、陣幕の偶数段を黒く染めたものが引両紋であると解釈し、沼田頼輔はこの引両が「龍」を象徴していると述べています。

この紋は「大中黒」とも呼ばれる「新田一つ引」を含むバリエーションがあり、資料によれば、足利氏と深い関係を持つ新田氏の子孫たちもこの紋を使用したとされています。

図案の種類

引両紋にはいくつかのバリエーションがありますが、横引きや縦引き、斜め引きのデザインが存在します。デザインにおいては、1本から7本の線が使用され、外枠なしのものや、丸や角の枠に収められた形状があります。

一つ引

一つ引は、単一の引両を描いた家紋であり、大中黒と呼ばれる特殊なバリエーションもあります。新田氏の本家である新田義兼の子孫が使用したとされ、他の新田氏庶子家も多くは二つ引両を用いていました。新田氏は源義国の子孫であり、足利氏一門にも深く結びついています。

二つ引

二つ引では、2本の引両を描いた家紋が特徴です。特に「揃い二つ引」というタイプがあり、足利将軍家やその庶流である三渕氏でも使用されています。デザインの違いは引両と丸輪の結合の仕方で、各家によって微妙な違いが見られます。

三つ引

三つ引は、3本の引両を描いたもので、家紋の中に吉川氏が使用するものがあります。特に「三浦三つ引」は三浦氏に由来し、竪三つ引のデザインも存在します。さらに、様々なバリエーションの家紋があり、波形の形状を持つ「分部三つ引」も印象的です。

使用される家

引両紋は様々な家で用いられ、足利氏や新田氏、さらには足利将軍家からの伝承を受けた家臣たちにも広がりました。他にも、三浦氏や伊達氏、吉川氏などもこの紋を使用しています。また、松浦氏など源氏に起源を持つ家系でも見ることができます。

引両紋は日本の歴史と文化において重要な役割を果たし、各家の個性や背景を反映した家紋として、現代でも多くの人々に引き継がれています。

もう一度検索