弘前師管

弘前師管（ひろさきしかん）

弘前師管は、第二次世界大戦中の1940年（昭和15年）8月から1945年（昭和20年）3月までの期間、日本の東北地方北部に設置されていた大日本帝国陸軍の軍事的な管区の一つです。当時、日本国内にはおよそ14から16の師管が置かれていましたが、弘前師管はその一つでした。

かつてこの地域には第8師団が管轄する第8師管が置かれていましたが、日中戦争の長期化に伴い、大陸へ派遣された師団が国内に戻る見通しが立たなくなりました。これを受けて、国内の防衛体制を維持するため、第8師管には新たに編成された第57師団が配置されることになります。この際、師団と師管を同じ番号とする従来の方式を見直し、名称を地名とする方針が採用されました。こうして、1940年7月に法令が改正され、同年8月1日に弘前師管が正式に誕生しました。

管轄区域とその変遷

弘前師管が設けられた当初、その管轄区域は東北地方北部の青森県、岩手県、秋田県、山形県の四県に及びました。各県には徴兵や予備役などの事務を行う連隊区が一つずつ置かれ、青森連隊区、盛岡連隊区、秋田連隊区、山形連隊区の四つがありました。当時、一つの県に一つの連隊区を置く構成は例外的でしたが、翌年には他の多くの師管も同様の体制に改められました。

所属する軍管区も時期によって変更されました。当初は一時的に東部軍司令官の防衛管轄とされましたが、すぐに新設された北部軍管区に属しました。しかし、1944年3月には再び東部軍管区へ所属が変更され、さらに終戦直前の1945年2月には東北地方に新設された東北軍管区の管轄下に入りました。

管轄師団の移り変わり

弘前師管を担当する師団は、戦局の推移に伴って目まぐるしく変わりました。設立当初は第57師団が管轄していましたが、この師団は翌1941年の軍事演習参加を機に満州へ移動し、以後帰国することはありませんでした。そのため、弘前師管の管理は、師団本体が移動した後に残された留守部隊である留守第57師団が引き継ぎました。

太平洋戦争が始まると、兵力増強の必要から1943年には留守第57師団などを基に新たな部隊、第47師団が編成されます。これにより、弘前師管の担当は第47師団へと移りました。しかし、戦況が悪化し本土から外地への兵力抽出が続くと、1944年6月には第47師団も前線部隊として再編成され、大本営の直接指揮を受ける予備兵力となってしまいます。再び管区の担当が必要となったため、かつて管轄した留守第57師団が再度動員され、弘前師管の任務を引き継ぐことになりました。

終末期：師管区への改称

戦争末期の1945年1月には、陸軍の管区制度に大きな変更が加えられました。それまで留守部隊が行っていた管区の防衛や兵員招集といった任務を廃止し、師管区部隊という常設の部隊が担当する新しい体制が導入されたのです。この制度変更に伴い、同年4月1日をもって弘前師管はその名称を「弘前師管区」と改めました。同時に、それまで管轄していた留守第57師団は、新しい制度に基づく弘前師管区部隊へと改編されました。

この改編に際し、弘前師管区の管轄区域にも変更が生じました。山形県は隣接する仙台師管区へと移管され、弘前師管区は青森県、岩手県、秋田県の三県を管轄する区域として再編されました。短い期間ではありましたが、弘前師管は戦時下の国内体制において、重要な役割を果たした管区でした。

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