弥平島集落

弥平島集落（やへいじましゅうらく）は、岐阜県各務原市下中屋町に属する、木曽川沿いの集落です。俗に「やべじま」とも称されます。各務原市の南西部に位置し、木曽川の右岸堤防の外側、すなわち堤外地にあたります。木曽川と北派川という二つの河川に挟まれた河畔の森の中に立地するという、特徴的な地理環境を持っています。

集落の名称は、この地がかつて各務原市稲羽の一部であった際の字名「弥平島」に由来するとされています。

この地には古くから人々が生活していた痕跡が見られます。集落内からは弥生時代から中世にかけての遺物が出土しており、弥平島遺跡として知られています。特に、S字状口縁台付甕といった特徴的な土器が見つかっています。

近代以降の集落の歴史を見ると、明治時代の後期にあたる1888年頃には既に下中屋村の一部として集落が存在していました。その後の河川整備事業は、集落の環境に大きな変化をもたらします。大正時代、1924年には建設省（当時）による「河身整備事業」が進められ、これにより弥平島は北派川を隔てて中屋村（旧下中屋村）や旧笠田島（現：各務原市川島笠田町）と接続される形となりました。

交通手段の面でも変遷が見られます。1940年には、集落から南へ約500メートル離れた木曽川筋に民営の渡船が開設されました。しかし、1947年には北派川に弥平島橋が架けられ、中屋村との間の陸路が確保されます。この橋は1968年にやや東寄りに架け替えられ、これに伴い木曽川の渡船は廃止されました。

現在の弥平島橋は、1978年に完成した各務原市道稲383号線の一部をなす沈下橋です。全長22.0メートル、全幅3.3メートルの規模を持っています。また、近年では2014年頃から集落周辺地域での開発が始まっています。

地理的な特殊性として、弥平島集落は前述の通り堤防の外側に位置しています。本来、河川区域内での居住は制限されることが多い中で、この集落は例外的に堤外地での居住が認められている地域の一つです。その一方で、河川区域内にあるため、国土交通省の中部地方整備局木曽川上流河川事務所からは、洪水時における重要水防箇所（重点区間や要注意区間）に指定されており、水害への備えが求められる地域でもあります。土地の所有形態としては、木曽川の堤外地でありながらも、現在もそのほとんどが個人の所有地となっています。

集落内の施設としては、神明神社が鎮座しています。この神明神社は、古くから集落の人々によって守られてきたものと考えられます。

弥平島集落は、古代からの歴史を持ち、河川改修や交通の変化を経て現在に至るまで人々が暮らし続ける、岐阜県各務原市における独特な環境を持つ集落と言えるでしょう。

参考文献には、『稲羽町史』、『各務原市史 考古編』、『各務原市の地名』、『各務原市のあゆみ』などがあります。

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