弦楽四重奏曲第1番 (メンデルスゾーン)

フェリックス・メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第1番 変ホ長調 作品12は、作曲家が20歳を迎える1829年に書かれました。この作品はベルリンで着想され、同年9月14日にロンドンで完成に至りました。

興味深いことに、メンデルスゾーンはこれ以前にも1823年に同じ変ホ長調の、そして1827年にはイ短調の弦楽四重奏曲を手掛けていましたが、結果的に作品12が彼の弦楽四重奏曲として初めて世に発表される形となりました（初期の変ホ長調作品は死後に遺作として、イ短調作品は「第2番」として出版されています）。

本作はおそらく、作曲家の近隣に住んでいたベルリンの天文学者の娘、ベティ・ピストールへ献呈されたと考えられています。全曲の演奏時間は約25分弱です。

楽曲構成

メンデルスゾーンが作曲した他の弦楽四重奏曲と同様に、本作も以下の4つの楽章で構成されています。

第1楽章：アダージョ・ノン・トロッポ - アレグロ・ノン・タルダンテ

変ホ長調、4/4拍子。ソナタ形式で書かれています。冒頭には17小節の穏やかな性格を持つ序奏が置かれています。主部となるアレグロ・ノン・タルダンテに入ると、活気のある第1主題が提示されます。より落ち着いた抒情的な第2主題は、属調である変ロ長調で現れます。提示部は弱音で閉じられ、展開部では主に第1主題に基づいた充実した音楽が繰り広げられます。再現部では二つの主題が主調である変ホ長調で再び奏され、一つの盛り上がりを築きます。その後、一度静寂を取り戻し、主題を回想する比較的長めのコーダを経て、最後は再び弱音で楽章の幕を閉じます。

第2楽章：カンツォネッタ: アレグレット

ト短調、2/4拍子。三部形式による楽章です。序奏はなく、冒頭からスタッカートが特徴的なリズミカルな主題が提示されます。中間部はピウ・モッソ（より速く）となり、ト長調へと転調し、16分音符を主体とした急速で動きのある楽想が展開されます。その後、再び冒頭のト短調に戻って主題が回帰し、楽章は終結に向かいます。楽章が終わりを迎える直前に置かれた、ヴァイオリンとヴィオラ、チェロがピチカートのみで演奏する部分は特に印象的です。

第3楽章：アンダンテ・エスプレッシーヴォ

変ロ長調、3/4拍子。この楽章は冒頭から優美で歌うような美しい旋律によって開始されます。楽章の中盤でこの冒頭旋律が再現された後、第2ヴァイオリンの奏でる下降音型をきっかけとして、16分音符が流れるように続く活発な楽想へと発展します。この展開部分が収束すると、再び冒頭旋律の断片が現れつつ、音楽は静けさを取り戻していきます。楽章はピアニッシモの最後の和音で閉じられますが、そのまま間を置かずに（アタッカで）終楽章へと切れ目なく続きます。

第4楽章：モルト・アレグロ・エ・ヴィヴァーチェ

ハ短調から変ホ長調、12/8拍子。前楽章の静かな終わりを打ち破るような、和音の強奏で一気に開始されます。力強い和音の連続の後、主要な主題が提示されます。メンデルスゾーンらしい、急速かつ流麗な性格を持つこの主題に基づき、熱気に満ちた音楽が展開されていきます。楽章の途中で、全楽器がユニゾンで演奏する部分が現れ、そこで拍子が4/4拍子に変わって一旦落ち着きを見せます。しかしすぐに12/8拍子に戻り、冒頭の主題が再び登場して急速な展開が再開されます。さらにその後、再度ユニゾンと4/4拍子による落ち着いた部分が挟み込まれます。楽章の終盤では、主調である変ホ長調へと転じると同時に、驚くべきことに第1楽章の冒頭主題が回帰します。これにより作品全体に統一感がもたらされ、最後は弱音で全曲が閉じられます。

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