弱毒生インフルエンザワクチン

弱毒生インフルエンザワクチン（LAIV）について

弱毒生インフルエンザワクチン（Live Attenuated Influenza Vaccine, LAIV）は、鼻腔内に噴霧する形式で接種する特徴的なインフルエンザワクチンです。このワクチンは、弱毒化されたウイルスを使用しており、主に「フルミスト」や「フルエンズ」として知られています。

ワクチンの効能

このワクチンの仕組みは、接種時に弱毒化されたインフルエンザウイルスを鼻腔内に噴霧することで、インフルエンザに似た感染状態を作り出し、免疫を誘導するというものです。特に、鼻腔内での免疫応答を強化し、分泌型IgA抗体を誘導することで、ウイルスの侵入を防ぎます。また、CD8陽性T細胞を誘導することによって、異なるウイルス株による重症化を防ぐ可能性もあります。

特徴

FluMist Quadrivalentでは、ウイルスは以下の特徴を持っています：

• - 低温馴化（CA: Cold-adapted）: 摂氏25度で効率よく複製できるウイルス株であり、通常のインフルエンザウイルス株の複製はこの温度では制限される。
• - 温度感受性（TS: Temperature-sensitive）: 野生株ウイルスが繁殖する温度帯では複製が制限されるため、体内では十分に活性化されません。
• - 弱体化（ATT: Attenuated）: ヒトのインフルエンザ感染モデルにおいて、古典的なインフルエンザ様症状を引き起こさないように設計されています。

これらの特性により、FluMist Quadrivalentは効果的かつ安全に免疫を誘導します。

低温馴化と再集合化

わが国では、このワクチンは特定の培養方法によって作成されています。低温馴化では、弱毒化ウイルスを選別し、摂氏25度で効果的に増殖する株を選びます。また、再集合化技術を用い、マスターウイルスと野生株ウイルスを低温下で同時に感染させ、各々の特徴を持つ株を作成しています。

A型インフルエンザにはArbor/6/60-H2N2、B型インフルエンザにはArbor/1/66が使用されています。

不活化ワクチンとの違い

このワクチンは、局所免疫IgAを誘導することで、発症予防効果が高まります。また、細胞性免疫を誘発することにより、異なるウイルス株に対しても重症化を防ぐ効果があります。

特に5歳未満の子どもにおいては、発症予防効果が高い結果が示されています。このため、米国疾病予防管理センター（CDC）は小児に対してフルミストの接種を推奨しています。ただし、成人においては通常の不活化ワクチンの方が防御効果が高い傾向にあります。

使用と禁忌

ワクチンの接種は、2歳から49歳までの健康な人が対象ですが、免疫が低下している人や特定の健康条件を持つ人には禁忌があります。具体的には、喘息を持つ5歳未満の子どもや妊娠中の女性が含まれます。

過去の勧告

2016-2018年には、米国の予防接種諮問委員会（ACIP）はこのワクチンの使用を推奨しない時期もありましたが、2018-2019年度には推奨が復活しました。過去のデータは限られていますが、2023年3月には、日本で2歳から19歳未満への使用が薬事承認されました。

このように、弱毒生インフルエンザワクチンは新しいインフルエンザ予防の手法として期待されており、その効果や安全性についての研究が続いています。

もう一度検索