張愛萍

張愛萍（ちょう あいへい）

張愛萍（1910年1月9日 - 2003年7月5日）は、中華人民共和国の政治家、軍人です。四川省達県に生まれ、波乱に満ちた20世紀の中国を、革命家そして軍人として駆け抜けました。中国人民解放軍における上将（大将）の階級を授与された、新中国建国の功労者の一人です。

革命への投身と軍での活躍

若くして革命思想に共鳴した張愛萍は、1928年8月に中国共産党へ入党します。翌1929年には上海で地下活動に従事するなど、初期から危険な任務に身を投じました。中国工農紅軍に加わった後は、軍事的な才能を開花させます。1934年には紅軍大学（後の抗日軍政大学）で学び、同年9月には紅3軍団の政治委員に就任するなど、若くして指導的地位に立ちました。

抗日戦争が始まると、張愛萍は八路軍の指揮部に参謀として加わり、対日戦線で活躍します。その後、新四軍に転じ、1941年には第3師第9旅の旅長、さらに第3師副師長と江蘇省北部軍区副司令員を兼任しました。1944年9月には新四軍第4師師長兼淮北軍区司令員となり、華中一帯での抗戦を指揮しました。

国共内戦期には、華中軍区副司令員や第三野戦軍前線委員会の委員を務め、人民解放軍の勝利に貢献しました。1949年10月の中華人民共和国成立後、張愛萍は第7兵団の司令員と浙江軍区の司令員を兼任し、新中国の初期体制を支えました。

建国後の貢献と文革の受難

建国後、張愛萍は軍の中枢へと進みます。1954年10月以降、副総参謀長として軍の戦略・作戦立案に携わるとともに、国防工業や科学技術装備の近代化という極めて重要な分野で指導的役割を果たしました。国務院国防工業事務室副主任、国防科学技術委員会主任、国家科学技術委員会第一副主任、軍事委員会科学技術装備委員会主任などを歴任し、中国の国防力近代化の礎を築きました。その功績により、1955年には人民解放軍上将の階級を授与されています。

しかし、彼の輝かしい経歴は、文化大革命の嵐の中で暗転します。1966年5月に始まった文化大革命期、張愛萍は批判の対象となり、厳しい攻撃に晒されました。彼は職務を解かれ、1977年8月に文化大革命が終結するまでの約11年間のうち、5年間にわたる拘禁生活を余儀なくされました。これは、党内外の多くの指導者が経験した悲劇の一端でした。

名誉回復と国防部長として

文化大革命の終結後、張愛萍の名誉は回復されました。彼は再び要職に復帰し、中国の復興と発展に力を尽くします。1980年9月から1982年5月にかけては国務院副総理を務め、国家行政の運営に携わりました。そして、1982年11月からは中華人民共和国国防部長に就任し、1988年4月までその任にあたりました。同時に中央軍事委員会副秘書長も兼任し、人民解放軍の再建と近代化において重要な役割を果たしました。特に、国防科技工業の発展や軍隊の正規化・近代化において、彼の経験と識見は大きな貢献となりました。

晩年は病を得ましたが、建国世代の指導者として敬われました。2003年7月5日、北京にて93歳でその波乱の生涯を閉じました。

張愛萍の生涯は、中国共産党の革命、新中国の建国、そしてその後の激動の歴史と深く結びついています。彼は軍人として戦場で指揮を執る一方、建国後の国防工業や科学技術の発展に尽力し、中国の安全保障と近代化に多大な貢献をしました。文化大革命における受難とその後の復帰は、彼個人の苦難であると同時に、中国現代史の複雑さを映し出しています。彼は、毛沢東体制下の中国において、軍の要人として、また波乱を乗り越えた政治家として、重要な足跡を残しました。中国人民解放軍海軍の創始者の一人である林遵とも関わりが深く、新中国の軍事力建設において多方面に貢献した人物です。

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