張込み

張込み（はりこみ）

概要

『張込み』は松本清張による短編小説で、1955年12月号の『小説新潮』に初めて掲載され、その後1956年10月に短編集『顔』として書籍化されました。この作品は、強盗殺人事件の捜査過程を描写しており、日本の犯罪小説の中でも特に高く評価されています。また、1958年には松竹によって映画化され、その後も数多くのテレビドラマとしてリメイクされています。

松本清張は、この作品のインスピレーションを、1955年の新聞記事に求めています。その記事には、東京の商店に強盗が入り、店主を殺害して逃走した内容が記されており、犯人は九州に家族を残して東京で働いていたことが記録されていました。これを受けて警視庁の捜査員が犯人の居所を突き止め、張込みを行うという展開を考え出しました。最初の設定では、犯人の妻を刑事の視点で描写するつもりでしたが、後に変更し、犯人と恋愛関係にあった女性が別の家庭に嫁いでいるという複雑な背景が加えられました。

あらすじ

警視庁の柚木刑事は、東京の目黒で発生した強盗殺人事件の犯人、石井を追いかける。しかし、犯人の昔の恋人である横川さだ子のもとを訪れることが彼の任務となります。さだ子は九州のS市に嫁いでおり、柚木はその近くの旅館で張込みを始めます。しかし、さだ子の日常は単調で、果たして石井が彼女の元に現れるのかどうか不安が募るばかりです。

登場人物

• - 柚木刑事: 謎を追う捜査官
• - 石井: 強盗殺人事件の主犯
• - 横川さだ子: 石井の昔の恋人

書誌情報

• - 書籍: 『顔』 (1956年10月発売、講談社ロマンブックス)
• - 収録作: 日本推理作家協会賞受賞作全集第9巻 (1995年)

映画化とリメイク

『張込み』は1958年に映画化され、松竹によって制作されました。この映画は、松本清張の作品に対する独自の解釈が加わり、新たな視点で描かれています。具体的には、原作では1人の刑事が張り込む場面があるのですが、映画版では若手刑事とベテラン刑事の二人が協力して捜査を進める設定となっています。

映画の背景には、原作のS市が清張の妻の実家のある佐賀県に設定され、撮影では多くの人が現場に足を運ぶほどの注目を集めました。この映画は、テクニックやストーリーが練り込まれ、全国からの観客を盛り上げました。

テレビドラマ

映画版を基にしたテレビドラマも多く制作されました。初めては1959年に放送されたもので、以降も様々な年代でリメイクされています。各バージョンでは、物語の舞台やキャラクターにアレンジが加えられ、それぞれ独自の魅力が表現されています。特に、1978年や1991年版は高い視聴率を記録し、多くのファンに親しまれています。

まとめ

松本清張の『張込み』は、深い人間ドラマと緊迫感のあるストーリー展開が融合した作品です。映画やテレビドラマを通じて、多くの観客に影響を与え続けています。現代においても、原作の魅力は色あせることなく、様々な形で語り継がれています。

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