張順

張順（ちょうじゅん）

『水滸伝』に登場する梁山泊の好漢の一人。天損星の生まれ変わりで、第三十位に列せられる。渾名は「浪裏白跳（ろうりはくちょう）」。

人物像

年齢は32、3歳。中背で色白、三筋の黒髭が特徴的な容姿をしている。兄は同じく梁山泊の好漢である船火児の張横。負けん気が強く、目的のためには強引な手段も辞さない性格だが、兄を諌めるなど分別のある一面も持つ。特筆すべきは彼の卓越した水泳能力で、四、五十里（約20km）を泳ぎ、数日間を水中で過ごすことができるほど。水軍頭領の中でも抜きん出た存在であり、その容姿や特技から、どこか人間離れした雰囲気を漂わせる。宋江の台詞によれば霊験をあらわすことができる能力を持っていたとも。物語の中では、死後、長江の水神金華将軍として祀られるという、破格の扱いを受けている。

生涯

元々は兄と共に揚子江で闇渡し舟を営み、旅人から金品を巻き上げていた。しかし、堅気になりたいと考え、兄と別れて江州に移り住み、魚問屋を始める。ある日、魚市場で乱暴を働く李逵を懲らしめようとするが、逆に打ち負かされてしまう。その後、宋江と出会い意気投合。宋江が黄文炳に陥れられた際には、戴宗と共に救出に奔走し、梁山泊へ入るきっかけを作る。

梁山泊では水軍頭領として活躍。宋江が病に倒れた際には、名医・安道全を迎えに建康へ向かう。その道中、水賊に襲われるも、得意の水泳で脱出。協力者を得て水賊を討ち、安道全を梁山泊へ連れ帰る。

百八星集結後は、水軍頭領の一人として西の水塞を守備。朝廷への帰順には徹底的に反対する。官軍の海鰍船との戦いでは、水上戦で勝利し、宿敵・高俅を捕らえるという功績を挙げる。しかし、梁山泊は朝廷の招安を受け入れ、張順も渋々これに従う。その後も水軍頭領として活躍するが、最後まで朝廷への不信感を抱き続けた。

方臘討伐の最中、杭州城攻略戦で、城内に忍び込むことを進言。単身で城門に近づくが、敵兵に発見され、矢や投げ槍、岩の集中攻撃を受け、戦死する。その後、宋江の夢に現れ、別れを告げた。杭州城陥落後、張横の体に乗り移り、敵指揮官の方天定を討ち取るという形で、宋江に最後の忠義を尽くした。

死後、竜王によって神に封じられ、方天定を討った経緯を宋江に語り、去っていった。

史実との関連

張順の最期は、南宋の武将・張順の逸話が元になっていると言われている。南宋の張順は、襄陽・樊城の戦いで、元軍の包囲を突破し兵糧を運び込もうとした際に討ち死にを遂げ、呂文煥によって神として祀られた。『水滸伝』の張順も、作中の漢詩から南宋の張順を踏まえたキャラクターであることが窺える。

関連項目

* 水滸伝百八星一覧表

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