強いCP問題

強いCP問題とは

強いCP問題とは、[素粒子物理学]]における未解決問題の一つで、強い相互作用を記述する[[量子色力学]において、CP対称性が破れているように見えるにもかかわらず、実際には観測されていないという矛盾を指します。

CP対称性とは

CP対称性とは、ある物理現象が、

1. C(電荷共役変換): 粒子の電荷を反転させる
2. P(パリティ変換): 空間座標の反転（鏡像変換）

という二つの変換を同時に行った場合に不変である性質のことです。簡単に言うと、「世界を鏡に映して、全ての粒子の電荷を反転させても、物理法則は変わらない」という対称性です。

[量子色力学]とCP対称性の破れ

[原子核]]を構成する陽子や中性子は、クォークという素粒子が強い相互作用によって結合した状態です。この強い相互作用は、[[量子色力学]という理論で記述されます。

QCDには、CP対称性の破れを表すパラメータ θ が存在し、通常、QCDはCP対称性を破ると考えられます。QCDがCP対称性を破る場合、中性子の電気双極子モーメントが一定の大きさを持つはずですが、実験で測定された中性子の電気双極子モーメントは、理論的な予測よりもはるかに小さいことが分かっています。これは、QCDがCP対称性を極めて高い精度で保っていることを意味し、なぜそのようなことが起こるのかが、強いCP問題なのです。

標準模型との関係

標準模型は、素粒子物理学における基本的な理論であり、電磁相互作用、弱い相互作用、強い相互作用を記述します。標準模型には、小林・益川機構によるCP対称性の破れが含まれています。そのため、標準模型の一部であるQCDがCP対称性を持つことは理論的に保証されていません。むしろ、CP対称性が破れている方が自然であると考えられています。

強いCP問題の解決策

強いCP問題を解決するために、いくつかの理論が提案されています。

ペッチェイ・クイン理論

最も有名な解決策は、ペッチェイ・クイン理論です。この理論では、アクシオンと呼ばれる新しい粒子を導入することで、強いCP問題を解決します。アクシオンは未だ発見されていませんが、その存在を探す実験が世界中で行われています。

その他の解決策

CP対称性の自発的破れ
アップクォークの質量がゼロである
* 標準模型に大域的U(1)対称性を追加する

まとめ

強いCP問題は、現代物理学における重要な未解決問題の一つであり、その解決は、素粒子の基本的な性質や宇宙の成り立ちに関する理解を深める上で非常に重要です。アクシオンの探索実験や、新たな理論の構築など、世界中の研究者がこの問題の解決に向けて研究を進めています。

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