強制労働の廃止に関する条約

強制労働の廃止に関する条約（第105号）

概要

強制労働の廃止に関する条約（第105号）は、国際労働機関（ILO）が採択した基本的な国際労働条約の一つです。この条約は、1930年に採択された強制労働条約（第29号）を補強する形で制定されました。条約に批准した国は、政治的圧力や監禁によって行使される強制労働を含む全ての形態の強制労働を廃止し、その利用を禁止することを誓約します。

対象となる強制労働の種類

条約で定義されている強制労働の具体例には、次のような行為が含まれます。

• - 政治的見解の表明や教育手段に基づく制裁
• - 経済発展の目的で労働力を不適正に動員する行為
• - 労働規律を保持するための手段としての強制労働
• - ストライキへの参加への報復としての懲罰
• - 人種や宗教に基づく差別的扱い

これらの行為を行う国は、即座にこれを禁止するため、効果的な対策を講じる責務を負います。

アジア諸国の状況

アジアにおいて、日本、韓国、中国は当初この条約を批准していませんでしたが、日本は2022年7月に、韓国は未だに批准していない状況です。特に韓国は、国家の安全に関する法律との整合性の観点から、この条約の批准を保留しています。他方、中国は2022年に批准を行いましたが、国際基準を満たすには至っていないと報道されています。

日本の批准経緯

日本は1957年に採択された強制労働の廃止に関する条約に対して長年批准を行っていませんでしたが、2022年にようやく批准しました。批准に至る過程では、国内法の整備が行われ、特に懲役刑を禁固刑に改正する措置が取られました。この法改正により、条約に反しない形での法的整合性が図られました。

条約の国会承認手続き

2022年3月に条約承認が政府の閣議で決定され、翌月には衆議院、参議院でともに全会一致で可決されました。批准書は7月19日に国際労働事務局に提出され、2023年7月19日から正式に発効しました。

刑法改正との関係

批准と同時に、懲役刑と禁固刑の統合を図る新たな刑法改正案も成立しました。この改正においては、拘禁中の者には「必要な作業」を行わせることが規定されていますが、受刑者の意思に反する形での強制は行わない方針が示されています。これにより、強制労働の禁止という条約の原則が遵守されると期待されています。

まとめ

強制労働の廃止に関する条約（第105号）は、国際社会における労働者の権利を確立するために非常に重要な役割を果たします。日本はこの条約を批准するまでに多くの課題を乗り越えてきましたが、今後も国際基準をしっかりと守り続けることが求められています。

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